出版社内容情報
戦災にあった静岡から鎌倉の旧居に戻り,漸く安心の境地を得た,と筆は綴り始める.時に有明七十一歳.泣菫と共に日本象徴詩の完成者と謳われながら詩壇と孤立した老詩人の脳裏には,今は亡き友人,家族,画家青木繁の俤が…….近代詩史・文学史にとって逸することのできない自伝的小説. (注 竹盛天雄,解説 野田宇太郎)
感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
17
神経を痛める細字の書は悉く取りかたづけられて、読書人の日々の課業として仏典が択ばれた(12頁)。木曾旅行(明治40=1907年7月下旬、 御岳に登山している、注239頁)の途次、贄川の宿で乗合馬車が暫くのあいだ停っていた時のこと。名産の「ななわらい」を一杯試みた。今湯上りの泡盛が、鶴見(著者がモデル、注237頁)にそれ以来の快味を覚えさせたのである(32頁)。野田宇太郎氏による解説によると、自伝という(251頁)。生命は滞るところなく流動する。創造の華が枯木にも咲くのである(54頁)。 2014/07/27
Darbytime
1
詩人の小説風自伝。この人の書いた詩を読んだことがないので良くわからなかったが、森鴎外の「追儺」「普請中」「花子」「サフラン」はその内読もうと思った。2014/01/23