内容説明
大正元年、舟木重雄・広津和郎・葛西善蔵ら「奇蹟」創刊。堺利彦の売文社にいた大杉栄・荒畑寒村「近代思想」創刊。小山内薫が欧州へ演劇修業に出発。大正二年、こま子との関係に苦悩、藤村パリへ出発。斉藤茂吉の『赤光』が広く文壇の称賛を得る。花袋・藤村・秋声・白鳥・泡鳴ら自然主義文学大家の変化と去就、明治文壇を背負いつつも明確な大正文学の胎動を、思潮と人間交流の中に鮮やかに描く。
感想・レビュー
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rbyawa
1
j113、伊藤文壇史において社会主義者たちは丸一日「実行するつもりのないテロ計画」のことを口にしていたことになっていて、それを解説の瀬沼氏がよく調べたと書いていたので心底心配したが、身を潜めたものの食べていくことが難しい、社会的に意義のあることをしたいという相反する嘆きを同時に抱える普通の人間になっていて安心した。大逆事件に関しての余波もその手の本で扱うほど強烈でもなく、まあ、じわじわ消えたり現れたりしてリアリティがあった。社会運動に関わる作家も少なくないなぁ、岩野泡鳴とか女性絡みで呼ばれる側だったのか。2019/11/05