草を褥に―小説牧野富太郎

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  • サイズ B6判/ページ数 229p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784093433518
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

自らを「植物の精」と呼び、植物分類学の研究に生涯を捧げた学者、牧野富太郎。その波乱に富む一生を、妻寿衛子との関係を軸に鋭く抉る。『サライ』誌上初の連載小説、待望の単行本化。

 『婉という女』(野間文芸賞、女流文学賞)で知られる著者の絶筆。「逆境に耐えて生き抜く女性を温かい目で支えながら描く」(三枝和子氏)作品として、稀代の植物学者牧野富太郎の妻・寿衛子を取り上げている。全財産を植物の研究に注ぎ込んだ富太郎。その彼を支えるため、待合の女将として働くことにもなる寿衛子は、想像を絶する生活に耐え抜き、しかも13人の子供(うち6人が成人)をその手で育てた。高知県立牧野植物園に保存されている富太郎と寿衛子の書簡(手紙)を多数引用して、今まで描かれることのなかった2人の〃素顔〃に迫る評伝風小説。さまざまな人間模様を通じて、明治人の気概が伝わってくる。『サライ』連載小説の単行本化。

内容説明

「植物界の巨人」光と翳の実生涯。書簡で初めて明かされる「奔放」と「純愛」。自らを「植物の精」と呼び、植物分類学に生涯を捧げた牧野富太郎博士。この稀代の学者と妻・寿衛子の波乱に富む生涯の詳細記録―。『婉という女』から40年。大原文学の最終到達点。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おいしゃん

27
朝ドラですっかり時の人になっているが、富太郎の人間らしさがよく描かれた作品だった。人間らしさ、といえば聞こえはいいが、身重の妻を放って放浪した挙句、旅先で浪費したので金をせびるなど、正直鬼畜に近いエピソードもあり、身を削ってただただ研究を支えた妻の姿が神々しい。2023/07/27

ムーミン2号

12
牧野富太郎の奥さん=壽衛子さんを描こうと「サライ」に連載されたもので、作者の大原富枝の絶筆である。しかし、副題が「小説 牧野富太郎」であることに?? と思っていると、内容の半分以上はやはり牧野のことだ。連れ添った奥さんから見た牧野、という描き方でもなければ、壽衛子の生き様を詳細に、というわけでもない。牧野や植物について書かれた多くの本を参照しながら、あるいは残された手紙をベースにしながらだろうが、いかにも材料には乏しかったか、と勝手に想像する。2022/02/22

Ryoichi Ito

8
植物分類学の草分け・牧野富太郎と妻・寿衛子の波乱万丈の生涯。土佐の裕福な造り酒屋の一人息子・富太郎は祖母に育てられた。小学校中退ながら,植物研究のために東大植物学教室に出入りを許され,78歳のとき講師として辞職した。金銭感覚ゼロ,他人の迷惑お構いなしの牧野には多くのファンがおり,折々窮地を助ける人が現れた。しかし,生んだ13人のこどものうち6人しか成人せず,入院費用を払えないため追い出されかかった東大病院で55歳の生涯を終えた妻の人生は何だったのか。寿衛子の手紙は涙なしにはとても読めない。 2019/09/29

ココリコ

6
大原氏はタイトルに「小説」と冠しておられるが、牧野氏の生涯を小説化しようとしても、高知という郷里を同じくするものとして大原氏は、自分自身の家ルーツをも語らざるを得なかったという点では、評論に近い考察的な伝記といえる。 それだけ、彼の植物に対する情熱が大原氏自身と重なり、此の本が彼女の絶筆となったということまで、その運命は重なるようだ。  物語の本質は、むしろ妻のサヨコの残した手紙の解釈からなるもので、そこから人間牧野富太郎をあぶり出すというおもしろい手法だった。2013/05/19

四號

5
「小説牧野富太郎」とあるけれど、影の主役はその妻でした。小説よりもエッセイに近いかもしれない。植物学でとんでもない業績を残した人、でも植物に恋しすぎて日常生活社会生活はてんでだめだった人。そりゃあ実家も傾くわと納得の生涯でした。経済観念なんてこの人にはあるけどない。「できるもの」を達成しないと我慢ならなかったのだろうなぁ、たとえ借金が増えようと。そして高知にこんな人よくいるわと納得。同じ土佐人の作者が書きたかったのもさもありなん。最後の感想文にもなっていない解説はいるのか疑問。2015/10/20

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