内容説明
勝海舟曰く「おれは今までに天下で恐ろしいものを二人見た。横井小楠と西郷南洲だ」。日本史の教科書でもろくに取り上げられず、幕末もののドラマで登場することもほとんどない。しかし小楠こそ、坂本龍馬や西郷隆盛をはじめ、幕末維新の英傑たちに絶大な影響を与えた「陰の指南役」であった。早くから現実的開国論を説き、東洋の哲学と西洋の科学文明の融合を唱え、近代日本の歩むべき道を構想した鬼才。その生涯を追う。
目次
第１章 いかにして開国論者になりしか
第２章 福井藩の賓師に招かれる
第３章 幕政改革の切り札として
第４章 秘策「挙藩上洛計画」
第５章 日本を道義国家に
第６章 新政府の参与に就く
第７章 小楠の魂は死なず
著者等紹介
徳永洋［トクナガヒロシ］
１９５０（昭和２５）年熊本市生まれ。熊本商科大学卒業。日本銀行に勤務。その傍ら、横井小楠に関する資料収集に励み、熊本・福井両市で「横井小楠と福井の人々展」を企画するなど、研究、顕彰活動を長年にわたり続けている
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感想・レビュー
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mitei
321
初めて横井小楠という人となりを知ったが、惜しい人物を亡くした気がした。その思想は明治維新後にも様々に影響を受けているし、坂本龍馬、勝海舟、西郷隆盛それぞれの関係を知ると、坂本龍馬よりむしろ横井小楠をもっと取り上げるべきではないかと思った。あと著者が普通のサラリーマンで学者でなく、独自の研究でこのような本を書いたことが驚いた。2017/09/03
AICHAN
38
図書館本。幕末ものを読んでいると横井小楠の名は頻出する。しかし、詳しいことは書かれていない。だから横井小楠のことはよく知らなかった。コナンと読むのかショウナンと読むのかさえ決めかねていた（後者が正しいとこの本で知った）。読んでよかった。坂本龍馬にしろ西郷隆盛にしろ、勝海舟の影響で維新の青写真を描いたと思っていたが、横井小楠の影響のほうが大きかったのではないかと知ったから。それに松平春嶽と橋本左内も小楠と同様、抜本的な国政改革を力説していたと知った。横井小楠。この人物にはもっと光が当てられるべきだ。2017/09/28
maito/まいと
26
幕末、数々の志士に大きな影響を与えた思想家、横井小楠の生涯と功績を紹介した一冊。行動力と情熱はあっても、構想を描く者がいなかったあの時代において、小楠が提唱した数々の方向性は、大きな影響力を与えたことが覗える。特に「国是三論」は抽象的な概念になりがちな提言の中でも、具体性・構成・説得力のどの要素においても、今の私たちが読んでも頷ける名文中の名文だと思う。坂本龍馬や高杉晋作のような行動した者にスポットが当たりがちだが、小楠のような思想家が注目されることには、これはこれで大きな意義がある。2013/06/07
isao_key
16
著者は同郷の横井小楠研究家。あまり表舞台に立って紹介されない小楠の業績と人生について、うまくまとめて書かれている。幕末頃から日本の進むべき道を明確に描くことができていた稀有な人物であったことが分かる。はじめにで「小楠は＜西洋文明はあくまで技術として優れているのであって、そこには徳はない。日本は東洋の徳ある文明をもとに、そこに西洋の科学技術を取り入れるべきだ＞と考えた」と、日本の国としての形がまだ出来上がっていない時点で、これだけ明確に語っている。どのように思想が形成されたかについて言及がなかったのが残念。2016/04/04
BIN
8
勝海舟、西郷隆盛、坂本龍馬に維新に対する大きな影響を与えた肥後の偉大な人物。名前だけは聞いたことがある程度でしたが、その先見性は比類ない。堯舜の徳の政治に西洋科学を加えるのが理想と儒者家が強い革命思想なのが特徴的。行動力もある人だが保守派の人に大いに嫌われ足を引っ張られたせいで肥後でも福井でも第一線に出ること叶わず、日本としては大きな損失だったと大いに思った。知名度がもっと高くなってほしい人物です。それにしても新資料って古書店でよく見つかるんですね。2020/02/27
