感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れなち
8
ルネサンスが花開いた街、フィレンツェの黄金時代(1400年代)を芸術の視点から描いた本。銀行家で、徹底的に名よりも実をとる「祖国の父」コジモ・ディ・メディチが、芸術振興の最大のパトロンだったり、ルネサンス的=ヒューマニズム的と言っても、絵画の題材は結構キリスト教的なのが興味深い。こうして見ると最盛期と言われるロレンツォ・ディ・メディチの時代も、コジモが育てた芸術家たちを切り売りして生き永らえたような気がしなくもない。1966年の本だけど古さを感じさせず、この本のおかげでフィレンツェ旅行を2倍楽しめた。2021/09/19
chang_ume
8
フィレンツェはなぜ、盛期ルネサンスに到達できなかったか。重大なテーマに踏み込んでいます。フィレンツェ現地を歩くと、ロマネスクとゴシックそしてルネサンスの表象が連続的で、明確な様式区分が意外とむずかしく感じる。おそらくこの感覚が本書の背景にもあって、工芸的な装飾性を特徴とするフィレンツェの中世ゴシック要素の中から、「新様式」である初期ルネサンスが生み出されたからこそ、後にローマなどで開花した盛期ルネサンスへと単線的に向かわず、歴史の「反作用」としてフィレンツェ・ルネサンスは後退・没落したという見通し。2020/02/13
さきん
5
トスカーナ地方に旅行する前にルネサンス勉強の一環として読んだ。おかげさまでフィレンツェを中心としたルネサンス文化の流れを理解できた。2015/07/08
takao
4
ふむ2024/03/03
馬咲
4
15世紀フィレンツェの繁栄と衰退を、多くの優れた芸術家を輩出した芸術文化面から叙述。芸術活動に対する認識を小手先の技から人間精神を表現する知的活動へと変えた新プラトン主義の受容、メディチ家のような政治力を持ち学芸にも理解のある有力なパトロン、市民の様々な造形依頼に対応すべく多芸な芸術家を養成したアトリエシステム等の要因から、フィレンツェでは芸術家の社会的地位と求められる知的教養の水準が高まった。レオナルドに代表される「万学の天才」的芸術家像の背景、時代の要請に対する芸術家達の努力への想像を掻き立てられる。2024/01/05