ハード・タイムズ

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  • サイズ B6判/ページ数 557p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784269820210
  • NDC分類 933
  • Cコード C1098

内容説明

「事実、事実、事実!」「空想などしてはならん」繁栄を謳歌する1850年代大英帝国の内に隠されたきびしい現実を鋭くえぐる、ディケンズ渾身の社会問題小説。

著者等紹介

山村元彦[ヤマムラモトヒコ]
1931年生まれ。京都大学大学院修士課程修了。現在大谷女子大学文学部教授。著書に『E.M.フォースター試論』(単著、あぽろん社、1992);『イギリス現代小説I』(共著、東海大学出版会、1988)

竹村義和[タケムラヨシカズ]
1951年生まれ。金沢大学大学院修士課程修了。現在大谷女子大学文学部教授。著書に『仮面とフィクション』(共著、山口書店、1987);『人の家・神の家』(共著、あぽろん社、1987)

田中孝信[タナカタカノブ]
1957年生まれ。広島大学大学院後期博士課程中途退学、大谷女子大学を経て、現在大阪市立大学文学部助教授。著訳書:『「大いなる遺産」-読みと解釈』(共著、英宝社、1998);『ヴィクトリア朝の人と思想』(共訳、音羽書房鶴見書店、1998)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

118
「著者は、太陽が当たるどの国の人々よりもイギリス人はひどい労働をさせられているのではないかと思っている。この馬鹿げた特異性を筆者が認めるのも、彼らにもう少し遊びを与えてやりたいからなのだ」空気が汚染され給料も十分にもらえぬイギリスの炭鉱や工場地帯で働く人々に光を当てているディケンズ。旅回りのサーカス団の人でなしな部分と人情の繋がり。ただ働くしかない労働者。資本主義精神とも呼べる合理的考え方が子供達にもたらす歪み。どの階級にも良き者もいれば悪しき者もいる。確かに、クリスマスキャロルの著書だと思った。2017/03/10

まふ

106
ディケンズの長編としては読みやすくサラリとした筋書きであった。人間の理性しか信じない男グラッド・グラインドの育てた娘ルイーザと立志伝中を自己宣伝する銀行家・実業家のバウンダビーと貴族上がりのプライドの塊であるスパーシット夫人と罪のない善良な男スティーヴン・ブラックプールなどにより理性だけではない「感情」の世界にこそ本当の人間の世界があることに気づかせてもらうというディケンズらしいテーマの物語であった。ストーリーが一本調子であり、わかりやすいが、その分ディケンズらしい深みがやや少ない。G1000。2020/01/10

のっち♬

77
「人は何かを楽しまねばいけませんからね」事実一辺倒な教育をモットーとするグラッドグラインド家が陥る失敗の数々。中産階級に蔓延した教育システムや功利主義精神を風刺すると共に、家族に道化の娘を添えることで寛容さや思いやりなどの崇高な人間性を育む大切さを訴えている。特に空想力はコミュニケーションの根源をなすものとして、長女の悲惨な結婚などで重要性が示唆されている。舞台となるコークタウンの空気は事実や正確さばかりを追求する人々の狂気に覆われているが、情報化社会が発達する度にこれは色濃くなっていく気がしてならない。2018/03/16

ゆーかり

22
ディケンズ10作目の長編。ディケンズにしてはたったの1冊という“短い”作品。舞台はロンドンではなく北の工場町。事実や数字のみを重んじる教育システムによって感情や人の気持ちを解する事のできなくなった人々。最後に皆の間を取り持ったのはシシー。彼女の出身は事実の対局とされた想像力の象徴サーカス、ひどい労働をさせられているイギリス人にとって必要なもの、娯楽の代表でもある。スリアリー「人は何か楽しまねばいけませんからね」労使問題や離婚問題も盛り込んでいたりサーカスで纏めるのはうまいがややいまいちな感じもする作品。2019/03/23

Miyoshi Hirotaka

21
産業革命により教育が変化した。共通の知識を持ち、組織の命令に従い、単調さに耐える働き手の大量供給が求められたからだ。教育は家庭から学校へと変わった。物語中の架空の工業都市コークタウンでは事実や数字を重視し、空想を否定する教育が行われた。それにより、自己の利益や利己心のみに価値観が置かれ、親子や労使の関係は蝕まれていった。事実や数字は信仰、希望、慈愛に役立ってこそ意味がある。実用に偏った今の教育に通じる問題が19世紀半ばに既に提起されていた。利他の心は無用の用に宿る。長期的には個人や社会にとってはより大事。2024/04/07

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