出版社内容情報
1990年代以降、わが国の地方自治は「争訟化」の時代に入った。全国的に市民オンブズマン組織が結成され、地方自治体を相手とした情報公開訴訟や住民訴訟等の活用が活発になってきている。また、改正地方自治法による国地方係争処理制度の創設は、自律性をもった法主体として自治体を位置づけ、国と対審させることを意図したものである。自治体の行財政運営「透明化」の時代が到来した。現在進行中の事柄の整理を超えて、こうした動向を本書は「誰が正しい法を語るのか」の変化という視点で分析する。
前著 『ローカルな法秩序』(小社刊、2002年)の応用編。
序章 二重の争訟化
1. 地方分権改革とオンブズマン
──「争訟」による「地方自治」の実質化
2. 法の意味を語る権威の揺らぎ
──国と自治体、自治体と地域住民の「規範をめぐる争い」
第Ⅰ部 住民自治の争訟化
第1章 パートナーとしての住民とアドバーサリィとしての住民
1. 「協働」論の死角、市民オンブズマン
2. 台頭する市民オンブズマン
3. 「協働」の担保としての「争訟」
4. 「必要な敵」
第2章 動員のモデルからみたアドバーサリィとしての住民
1. 行為規範としてのルールか権力資源としてのルールか
2. 権力資源として法を動員する地域住民
3. 関係距離の大小と法的能力の高低──地域住民が動員する条件
4. 自治体間で法の動員頻度が異なる理由
5. 自治体に対して強まる「正しい」法解釈への要請
第3章 争訟化に対する自治体職員の認識と対応
1. 法令・通達の重要性の高まりを意識する自治体職員
──分権改革をめぐる大阪市職員の意識調査
2. 自治体職員の直面する現実
3. 地域住民の争訟意欲の高まりに対応した自治体行政
第Ⅱ部 団体自治の争訟化
第4章 立法者意思の重視から文脈の重視にむかって
1. 中央省庁が主導する立法過程
2. 法律所管省庁の法令解釈権を導出する論理
3. 日本型立法者意思説による法律所管省庁の法令解釈権の正当化
4. 法解釈の文脈化にむけて
──立法過程への関与とは異なる法令解釈権の根拠
5. 法令解釈権の行方
第5章 争訟の制度化
1. 国地方係争処理制度の創設
2. 公法上の基本的法原則のイデオロギー的効果
──国地方係争処理制度をめぐる攻防
3. 制度化のインパクト──中央省庁の法の意味を語る権威の低下
終章 透明性の時代
1. 共時的争訟化
2. 理念としての透明性
3. 透明性と争訟化
あとがき
索引
内容説明
法の意味を語る権威の揺らぎ。「透明性の時代」がもたらした団体自治と住民自治の「二重の争訟化」。
目次
二重の争訟化
第1部 住民自治の争訟化(パートナーとしての住民とアドバーサリィとしての住民;動員のモデルからみたアドバーサリィとしての住民;争訟化に対する自治体職員の認識と対応)
第2部 団体自治の争訟化(立法者意思の重視から文脈の重視にむかって;争訟の制度化)
透明性の時代
著者等紹介
阿部昌樹[アベマサキ]
1959年群馬県に生まれる。1989年京都大学大学院法学研究科博士課程中途退学。現在、大阪市立大学法学部教授(法社会学)
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