ちくま新書<br> 平家物語―「語り」のテクスト

ちくま新書
平家物語―「語り」のテクスト

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  • サイズ 新書判/ページ数 222p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480057730
  • NDC分類 913.434
  • Cコード C0295

内容説明

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」に始まる詠嘆口調の名調子と雄渾無双のスタイルで、今も人々の心を魅了する『平家物語』。それは浄土教信仰による終末論と無常観を背景に、源氏と平家の興亡を通して人の栄華のはかなさを描いたものとされている。しかしこの物語には、武家政権を王朝の秩序に組み入れるという、王権の側の隠された意図があった。「語り」から「文字」へのテクスト生成の現場を検証し、日本史と国文学の境界を超えた斬新な入門書。

目次

第1部 歴史の構想(祇園精舎;清盛と重盛;頼朝の挙兵;源平交替史)
第2部 反転する世界(終末の不安;怨霊・天魔・物の怪;テクストの流動)
第3部 「平家」語りの生成(語りのネットワーク;鎮まらざるもの;悪人の往生;灌頂巻の成立)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

高橋 橘苑

8
この著者の文章は初めてだが、ちょっと驚いた。平家物語に対する考察を相当に深めることが出来た。個人的に関心のある、平家物語の後世への影響に関しての論考が鋭い。無力化して行く王朝秩序に、武家政権を組み入れる構想は現実政治に於いては破綻する。しかし、物語の流布・浸透により、王朝枠内での源平合戦という神話を作り出し、今日に至るまで、その源平交替の対抗形式が、日本社会という全体の枠組みを保証していると指摘する。また、朝敵が次々に変化し、単なる力関係に王朝秩序が引き摺られて、因果論をも相対化して行く考察も興味深い。2014/11/05

Haruka Fukuhara

5
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理りをあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者もつゐには滅びぬ。ひとへに風の前の塵に同じ。」仏教的な言葉と七五調の美文が印象的な平家物語の解説本。「平家物語は源平交替史観で書かれている。それは、おごれる平家一門の悪因悪果を説く因果物語であり、また滅亡した平家一門の鎮魂の物語でもある。」2017/03/21

えふのらん

3
相手が平家物語なのでもちろん文献学がアプローチの基本だけど、発信者の欲望/受信者の反応といったメディア論的なところまで突っ込んでいて刺激的だった。滅んでいく平家を題材にとっているのだから源平交替史観に依ったイデオロギー的な偏りは避けられない。これはもう現代語訳でもわかるようなことなのだが、著者は編纂課程で編みこまれた様々な声が源平交替史観を超える価値を作品に与えていると語る。例えば棟梁でありながら最期まで家族の安否を気遣う父親として語られる宗盛、維盛、東大寺を焼きながら穢れを流すような役割を引き受ける重衡2022/06/02

OjohmbonX

3
すごくダイナミックな平家物語の理解が示されて、読んでてワクワクする本だった。静的に固定化されたテクストではなく、成立の過程、その時代の政治的・思想的背景、あの世とこの世の境目、史実としての源平合戦との相違、語り口や視点の切り替わり、などなどを綜合して、平家物語をダイナミックな存在として捉えていく。2022/02/23

くじら

0
実際は平家への諸国の反乱だった出来事を源平合戦、平家の悪行の応報として物語化される過程を説明したもの。宗盛父子の懺悔と湛豪の唱導、維盛の妻子への妄執と滝口入道による減罪、重衡の自分自身が善知識となった懺悔、それぞれの贖罪の物語、法然の仏教観からの、だという。最後に建礼門院の懺悔語りがそれらを引き取る。平家物語の魅力の一端を言語化してくれたように思う。

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