出版社内容情報
知識創造理論のパースペクティブから、日本型イノベーション・システムの特質を分析した一冊。産業別事例分析を踏まえて、「知識立国」のビジョンを提唱している。
●グローバルな知の行方を追う
知の性質は、本来、境域横断的である。その営みはしばしば既存の学問領域の垣根を越え、組織の境界を跨ぎ越し、あるいは国境を越えて展開される。ここでは、境界を越えて融合した知識の行方を追い、その背景となってきたグローバル経済の特質を探求する。
われわれは、知識科学が拓く多様な研究領域を見てきた。しかし、これまでの旅程は、諸科学の再編・統合を目指す知識科学という企てにとって、まだ始まりに過ぎない。微視的な視点からの探求は、遺伝子レベルでの知のエレメントの発見にまで及び、他方、巨視的な視点からの探求は、国ないし地球規模で知を活用するためのメソドロジーをも包括するであろう。知ることへの欲求が終わらない限り、それらを横断する知識科学のフロンティアも拡張し続ける。新しい研究領域への遍歴の叙事詩が始まる。
目次
第1章 日本型イノベーションの特徴と課題―認識論と組織論の視点から
第2章 日本鉄鋼業のプロセス・イノベーションと人的資源
第3章 モーターサイクル産業の技術発展
第4章 自動車産業の高度成長とプロセス・イノベーション
第5章 集合革新のダイナミクス―半導体産業におけるDRAM開発の事例研究
第6章 ソフトウェア産業におけるイノベーションの特質
第7章 製品開発の連続性と競争優位―ファクシミリ産業の事例
第8章 組織的研究開発のメカニズム―第五世代コンピュータの研究開発をめぐって
第9章 大規模科学技術システムと日本型研究開発マネジメント―航空宇宙開発の事例を中心として
第10章 日本型イノベーション・システムの課題と超克