内容説明
歴史の見方が大きく変わりつつある。中世は近代によって克服されるべき停滞期ではなかった。固有の歴史性を踏まえた思想史が求められる。豊かな知的伝統の内包と外延を確かな見識で叙述する最新の総合的通史。増補決定版。
目次
第1部 古代キリスト教・教父思想
第2部 中世前期の文化と思想
第3部 初期スコラ学の思想
第4部 アラブ哲学とユダヤ思想
第5部 盛期スコラ学の思想
第6部 後期中世の思想
第7部 近世への移行
著者等紹介
リーゼンフーバー,クラウス[リーゼンフーバー,クラウス][Riesenhuber,Klaus]
1938年、フランクフルト生まれ。上智大学教授、同中世思想研究所所長。専攻、哲学・思想史
村井則夫[ムライノリオ]
1962年、東京生まれ。明星大学専任講師。専攻、哲学
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感想・レビュー
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マウリツィウス
17
【ウルガタ訳ラテン語聖書類とプロテスタント】「新約聖書」をテクストに設定した旧約理由を『ウルガタ訳聖書』は内包している。しかし、七十人訳旧約聖書を補完意味とした古代ユダヤ教メシア到来記録を『新約聖書』の成立背景とするのならばプロテスタントにおける定本にウルガタを加えるのではなく「ネストレ」の定本誕生を『新約聖書ギリシャ語定本』に鮮明化、そして導き出せる答と展開はテクストとしての聖書記録、「正統終末観」を『ヨハネ黙示録』としたギリシャ語聖書世界、比較論考を施すとスコラ的思弁をルターはクリアしている。/再記録2014/06/30
Francis
15
16年間も積ん読(本当です)してあってふとした拍子に出てきたので読んだ。西欧の中世思想はガチガチのキリスト教原理主義に絡め取られているのではないか、と言う偏見が未だにあるのかもしれないが、どうしてどうして、この時代はビザンティン帝国、イスラーム帝国では哲学界でアリストテレス研究などが花開き、その影響を受けた西方カトリックの哲学・神学も大いに発展。思想史的にとてもおもしろい時代だったことがとても良くわかる。2019/12/22
マウリツィウス
14
【スコラ思想実在論】「スコラ学」とは新約/旧約聖書を統合化させたアクィナス功績を批判する目的でもあり実質利用方法を明示するとギリシャ異教による征圧手段を遮断する働き含め古代ユダヤ教派生の異端から防御する障壁ともなる。ユダヤ教/キリスト教二項対立問題は新教/旧教明晰視以前の系譜源流類型を意味する。ギリシャ古典をキリスト教制度管理下に置くことでの異教鎮圧論はスコラによる暴力勢力をも肯定容認-英国最上劇作家こそが王権批判/知識特権層を作品を介して徹底批判することで革新を施す。古典意味・宗教権威は明確区分が必要。2013/06/24
あんころもち
8
合理的思考が支配的となる近代、J.ロックは神ですら「合理的人間」であるかのように扱った。この本はその前段階、中世における、信仰と哲学(学問)との葛藤の歴史を描いた本である。この葛藤によって近代発展の礎となる学問的基盤(大学、合理的思考etc)が築かれた。近代は革命的に生まれた訳ではない。教会史を中心に、世界史の教科書を裏からなぞることができて面白い。ただ、プラトン主義、アリストテレス主義といったものが具体的にどのような影響を与えたのか、暗黙の前提だからか、いまいちわからなかった。2014/12/30
evifrei
3
西洋における中世は、ルネサンスに比較して従来は哲学・思想的には実りの無い時代だとされる事が多かったが、思想史という文脈から敷衍した場合、中世とルネサンスは連続した一連の時代だと捉えるのが正しいという説を肯定的に受容できる。また、個別的で断片的な知識の獲得を希求するに留まらず、体系的な知識の構築は中世という時代から既に準備されていたという点が興味深い。特にその対象も広範なものを含んでいたことが、初期スコラ哲学の時代においてサン=ヴィクトル学派が機械学や兵器学の体系的理解を試みていた点などから指摘される。2019/10/06