出版社内容情報
ラテンアメリカを代表する異能の作家が、ワールドカップの歴史を縦糸に綴る詩情豊かなエッセイ。
内容説明
ある日、風の女神が男の足に接吻する―ラテンアメリカ直送、奇跡の空間に捧げる151話。
目次
著者の告白
サッカー
プレーヤー
ゴールキーパー
アイドル
サポーター
フーリガン
ゴール
レフェリー
監督〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
12
サイド線を駆け上がる漆黒の悪魔ガリンシャの如き軽妙なリズムで語られるのは、人類史の表舞台には決して上がることなく建造されてきた神殿の話。新大陸に眠る『火の記憶』を呼び覚ました南米の魔術師の手にかかれば、スタジアムは祭壇に、選手とサポーターは生贄とその血潮を待望する群集に、そしてボールは頂上で掲げられる脈打つ心臓へ変貌する。サッカーとは自ら喰われんとする欲望と喰らい尽くさんとする欲望とがウロボロスの如く円環をなし、そのめくるめく欲望の球形が見る者の心を焼き尽くす、つまりもうひとつの火の記憶なのかもしれない。2011/12/25
モスラ
0
サッカーで人が死ぬなんてと思っていたけれど、今ではサッカーは人が死ぬほど面白いのだと思う。これを読んだ後、決定的にサッカーが好きになったと思った一冊。世界経済を呑み込むFIFAの巨大化、根強い人種差別、あるいは誇りのために戦って銃殺されたチーム、人気の凋落によって人生が狂っていく選手たち、サッカーのために中断される戦争……サッカーを通じて世界が見えてくると言った人がいたけれど、まさにその通りだと思った。2014/09/18