出版社内容情報
「戦国の貴公子」としての新たな信玄像。
内容説明
武田信玄は代表的な戦国大名として名高く、武将・政治家として取り上げられることが多い。本書では、時代を生きぬいた一人の人間として、彼の教養や思想など、多面的に考察し、現代も思慕され続ける豊かな人間像に迫る。
目次
第1章 誕生と家督相続(戦乱の中の誕生;諏訪大明神の応護―戦勝を宿命づけられた出生 ほか)
第2章 川中島の戦い(信濃侵略;信府平定 ほか)
第3章 戦いの中に死す(上野の侵略;駿河の侵略 ほか)
第4章 人間信玄(家族の中で;自筆文書に現れる人間像 ほか)
第5章 統治者としての信玄(甲斐国民のために;戦争にあたって ほか)
著者等紹介
笹本正治[ササモトショウジ]
1951年山梨県生まれ。1974年信州大学人文学部卒業。1977年名古屋大学大学院文学研究科博士課程前期修了。信州大学人文学部教授。博士(歴史学)(名古屋大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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金吾
28
信玄の業績が過大評価されているのを資料を挙げながら語っているのが興味深かったです。また経済の観点から信玄を捉えているのはわかりやすかったですし、それが事実ならば当時の甲斐の民と大日本帝国の国民は似ており、日本の民衆の一類型になるのかなぁと思いました。2023/03/22
futabakouji2
11
武田家の研究者が武田信玄のことを書いた本。信玄の実像をなんとか伝えようとする作者に感謝。 信玄の棒道を否定したり、治水事業もそこまで大きくない、金山衆は自立していたと世間で言われている信玄の業績を否定している。 では何が凄かったのかと言うと、信玄時代は甲斐の人々にとってバブル時代であること。甲斐の領内で戦をしないで他国から富を勝ち取ってことで領内の人達が豊かになったこと。信虎・勝頼は甲斐で戦争したことになったけど、信玄はしていないことが良かったのではないだろうかと作者は主張している。2018/06/24
中島直人
11
真実の信玄に迫ろうとする著者の姿勢に感銘を受ける。いわゆる信玄神話?的なものは悉く否定疑問を呈されるが、等身大の武田信玄も十分に魅力的。面白い。2016/11/14
綱成
10
小説だけでなく、人物としての信玄を知りたく読了。発見と学びの多いなと感じました。宗教に対する考え方と対応方法、家族との関係、様々な功績の背景、この3点が大きいと感じました。宗教については、信玄自身もですが、地域支配と神格化という点が新しい発見。家族との関係については、信虎の功績と三条との関係。様々な功績については、新しい事業というより、既成事業の保護及び推進という考え方。いずれにせよ、自分の中に新しい信玄像が出来、満足です。2016/06/04
デューク
2
誰もが知る「甲斐の虎」、武田信玄。教養や思想など、様々な切り口からその実像に迫った一冊。 武田信玄は、存命中はもとより、現在に至るまで多くの人々から敬愛されている。だがその生涯は、時代の変わり目の中で内外の敵との戦いの生涯でもあった。信虎追放を主導した家臣の思惑、信玄と謙信の領土政策の違い、飯富虎昌が義信を立てて謀反を起こした理由、信玄と信虎や勝頼との決定的な違い、戦国大名が今での地方の英雄である理由、などなど。通り一遍の伝記ではなく、その内面や歴史的意義にまで踏み込んだ一冊。おすすめ2020/06/10