LD・学習障害事典

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  • サイズ A5判/ページ数 365p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750323602
  • NDC分類 378.033
  • Cコード C0536

出版社内容情報

学習障害に関わる親・教師・医師が適切に対応できるよう、学習障害問題の用語と概念を、基本的に、かつ高度に専門的に解説した学習障害問題事典の決定版。その原因・症状・治療、関連する法律・教育・社会関連事項をカバーし、収録項目数は600を超える。

監修者まえがき

はしがき
利用の手引き
略語一覧
LD・学習障害事典本編
参考資料
用語解説
参考文献
和文索引
欧文索引

はしがき
 LDは発話、読み、書き、算数、集中、推論など幅広い問題を表す範囲の広い用語であるが、アメリカでは、5人に1人の子どもが、このLDと戦っている。アメリカ人の7人に1人にこの障害があり、毎年新たに12万人の生徒が、LDの診断を受けている。このほかにも何千人もの生徒が適切な診断を受けることもなく、援助の要件を満たさないとみなされ、療育を受けることもないままになっている。
 しかし、必ずしもすべての学習の問題が学習の「障害」すなわちLDであるわけではない。子どもによっては「特定」のスキルの発達が他の子ども達よりもゆっくりなだけである。そのため、学習困難の子ども達の療育には、早期の診断と療育が欠かせない。ほとんどの子ども達が時々は学習や行動に困難を示しているものの、あとになって問題と一致する一定のパターンが明らかになることから、さらにテストを行う必要性が示唆される。就学前の児童は、もし以下のようなことがらに困難があれば、テストを受ける方がよいだろう。これにはアルファベットの学習、単語の音韻、音や文字の結合、数えることと数字を学習すること、知らない人に話しかけた時に分かってもらえること、はさみやクレヨンや絵の具を使うこと、触れられた時過剰にあるいは過小に反応すること、単語や句の使い方、発音、階段の上り下り、色名を言ったり覚えたりすること、着衣などの問題がある。小学校ではLDのある生徒は新しいことばを学ぶこと、完成した文で話すこと、会話のルールを学ぶこと、物語を再現して話すこと、情報を覚えること、友達と遊ぶこと、一つの活動から別の活動に移ること、考えを表現すること、鉛筆を持つこと、手書き文字、算数の問題を解くこと、指示に従うこと、日々の決まった活動を覚えておくこと、読解を学ぶこと、形を書いたり写したりすること、教室で言われた情報のどれが重要なものかが分かること、声をコントロールすること、身だしなみを整えることと整理をすること、提出日に間に合わせること、年令相応のゲームで遊ぶことなどに、問題が見られる場合が多い。
 LDのある成人は、新しい情報を覚えること、組織立てること、読解、仲間や同僚との付き合い方、職探しや、職を続けること、方向感覚、ちょっとした冗談の理解、適切な相槌を打つこと、指示に従うこと、読むこと、書くこと、文字つづり、算数、自尊感情、適切な文法を使うこと、提出期限を守ることなどに困難が見られる。
 LDそのものは、昔からあったにもかかわらず、存在が認められるようになったのは、最近のことである。専門家がLDと考える症状の多くが1世紀以上も前に観察され、記載されていたが、この用語自体は1963年にサミュエル・カークによって造られたものであり、この分野は進化し続けている。
 たとえば、この世紀(20世紀)の多くの間、ディスレクシアのような状態は、象徴倒錯症や微細脳損傷など、種々の名前で呼ばれてきた。しかし、アメリカでは、この広汎で複雑で、しばしば不十分にしか理解されない、様々な学習の問題に対する名称が普通に使われるようになるには、実に1970年代の特別支援教育に関する法律やサービスの出現を待たなくてはならなかった。同様に、注意障害は主として多動な男児の問題と見られていたころから、まだ10年も経っていないのに、今日では専門家の間で、注意欠陥多動性障害(ADHD)はそれまで考えられていたよりはるかに複雑なものであり、女児にも従来考えられてきたより多く見られ、成人にも広がりを持つと理解されている。
 ほんの1世代前までLDは余り理解されず、無視されることも多かった。親達が子ども達のために特別支援教育のサービスを得ることができたとしても、これらのサービスには実効性のないものも多かった。教育面の法制化がなされたことで、教育的サービスの質は劇的に向上した。過去20年の間に研究でもその範囲や深さが劇的に増し、様々な医学的LDにかかわる、その背景にある問題に及ぶようになってきている。脳画像や遺伝子研究などの研究法により、医学的なLDの起源や特徴に関する科学的理論を支持する、はっきりした証拠が得られるようになってきている。過去10年以内の間にいくつかの障害の治療における薬物の役割と補助機器技術の発達はLDの療育に革命をもたらした。
 特別支援教育の分野で用いられる用語類でさえ、劇的に変わりつつある。専門家が個人とその学習について記載する方法ははるかに診断的に正確になってきている一方、同時にはるかに人間的になっている。同様に過去30年にわたって、LDのある人々の権利を守るための法律が改定されるにつれ、特別支援教育の分野で用いられる用語が、教育的意味ばかりでなく、法律的意味も持つようになってきている。
 本書は幅広いLDおよび周辺の情報の案内書および参考書として、LDに関連する組織についても詳しく述べている。LD診断のために教育された専門家による敏速な評価や療育に代わるものではない。
 本書に掲載された情報は手に入れることのできる最新の出典からのものであり、LDの分野の最新の研究が含まれ、共著者個人の経験に加え、指導的な教科書や専門誌から選りすぐったものである。
 本書には、3つの重要な分野が含まれている。

LDとその療育
・学力障害に関する掘り下げた考察
・発達性発話と言語障害
・注意障害
・ADHD
・中枢神経刺激剤
 など

法律上の考察および関連事項
・アメリカ障害者法
・1973年のリハビリテーション法
 など

学校関係の項目
・独立した教育評価
・個別教育プログラム
・個別移行計画
・補助機器技術
・標準アセスメント
 など

 しかしながら、読者はこの領域の変化が非常に速い速度で起こっていることを忘れてはならない。更に詳しい情報が必要な読者のために参考文献一覧を付した。すべての見出し語は相互に参照されており、また付録に付加情報を収めてある。

キャロル・ターキントン
ペンシルベニア州カムルにて

内容説明

LDに関する広範囲の用語や概念を収録した事典。配列はアルファベット順で各項目には欧文表記と日本語訳を併記。本編の他に略語一覧、参考資料、用語解説、参考文献、和文索引、欧文索引が付く。

著者等紹介

ターキントン,キャロル[ターキントン,キャロル][Turkington,Carol]
医療ジャーナリスト、編集コンサルタント。ペンシルベニア州に在住

ハリス,ジョセフ・R.[ハリス,ジョセフR.][Harris,Joseph R.]
博士号取得後、特別支援法だけでなく、小児神経心理学、LDなど幅広い研鑽を積み、学区心理士、特別支援教育ディレクター、心理学研究者、小児・思春期心理判定員を勤める。サウス・カロライナ州北部在住

竹田契一[タケダケイイチ]
1961年米国アズベリー大学卒業。1962年米国ピッツバーグ大学大学院言語病理学科修了。1965年米国ミシガン大学大学院言語病理学科中途帰国。1975年慶應義塾大学医学部大学院医学研究科修了、医学博士。伊豆韮山温泉病院スピーチリハビリテーション・クリニック室長を経て、大阪教育大学障害児教育講座教授、現大阪教育大学名誉教授、大阪医科大学小児科客員教授。現大阪医科大学LDセンター顧問

小野次朗[オノジロウ]
1978年大阪大学医学部医学科卒業、大阪大学医学部小児科医員。1984年米国オハイオ州立大学コロンバス小児病院研究員。1987年米国医師資格取得。1989年大阪大学医学部助手。1992年医学博士取得。1994年市立豊中病院小児科部長。1996年大阪大学医学部附属病院小児科医局長(小児神経グループチーフ)。1999年和歌山大学教育学部障害児教育学教室教授

太田信子[オオタノブコ]
1975年東京大学医学部保健学科卒業。1976年国立聴力言語障害センター付属職能職員専門職員養成所修了(現国立身体障害者リハビリテーションセンター学院言語聴覚学科)。1980年米国ギャロデット大学職能学修士課程修了、職能学修士。1988年淀川キリスト教病院、済生会茨木病院等にてスピーチセラピストとして勤務。1995年神戸総合医療専門学校言語聴覚士科講師。1996年土佐堀YMCAサポートクラス(LD児プログラム)講師。1999年神戸総合医療専門学校言語聴覚士科学科長。言語聴覚士、特別支援教育士SV

西岡有香[ニシオカユカ]
1979年神戸市外国語大学英米学科卒業。1980年大阪教育大学特殊教育特別専攻科修了。清恵会病院、大阪警察病院等にてスピーチセラピストとして勤務。1994年大阪教育大学研究科障害児教育専攻修了、教育学修士。1994年神戸YMCAサポートプログラム講師。2000年大阪市立大学文学部非常勤講師。言語聴覚士、学校心理士、特別支援教育士SV(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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