出版社内容情報
ヒステリー観の変遷、文学史における性と生、戦時雑誌の公共性、ポートレートとジェンダーの問題、感覚の抑圧と近代主義など、近代日本における感性の変遷を「偏見」をキーワードに読み解き、メディア論・文化研究の新しい視角を提示する刺激的な論考集。
まえがき 坪井秀人
第1章 KNOW THYSELF ?――猫の観相学 坪井秀人
1 書く猫、そして観察する猫
2 観察のディスクール
3 鼻という中心
4 観察される主体
第2章 明治末、超感覚を定位する――催眠術・千里眼・科学 一柳廣孝
1 心霊写真は語る
2 催眠術が超常感覚を開く?
3 「超」はあるのか――千里眼事件の帰趨
4 おわりに
第3章 ヒステリー――メディアのなかの病 船越幹央
1 女性の病「歇以私的里(ヘイステリ)」
2 通俗医学書にみる記述
3 ヒステリーの意味
4 論理的な逸脱
第4章 読書としての文学史――文学史の〈性〉と〈生〉 和田敦彦
1 「史」という読み方
2 文学史の中心点
3 小説と史記述の性
4 史記述の人生化
5 「中年」という中心
6 史記述と読みの規制
第5章 出版バブルのなかのファシズム──戦時雑誌の公共性 佐藤卓己
1 戦時出版に関する「戦後的常識」
2 国民雑誌の黄金時代
3 戦時雑誌バブルの実相
4 大衆雑誌の国民的公共性
5 おわりにかえ> 6 近代主義における感覚の征圧
7 感覚による自立的な「自己規定」
8 社会のマジョリティとしての障害者=高齢者
第9章 「障害者」差別に関する断想――一介助者としての経験から 市野川容孝
1 「儀礼的無関心」と「無礼な注目」
2 「作為的無関心」
3 差別を可視化すること──「青い芝」の運動
4 「健常者のアイデンティティを問いなおす」
内容説明
近代日本という時代に個人や集団がアイデンティティを見いだすために、時代に即応した感性や感覚のあり方が用意され、人々はそれを身につけることを要請された。ときに教育され、扇動・動員され、あるいは置き忘れられていったさまざまな感性。その葛藤と順応の様相を文化史のなかで検証し、近代における公共空間と個人との関係や、メディアによって変容されていった個人の主体の問題を浮かび上がらせる。感覚の抑圧と近代主義、観察する技術と視線の偏向、文学史における性と生、ヒステリー観の変遷、戦時雑誌の公共性、ポートレートとジェンダーの問題など、これまで自明視された枠組みを揺さぶり、メディア論・文化研究の新しい視角を提示する刺激的な論集。
目次
第1章 KNOW THYSELF?―猫の観相学
第2章 明治末、超感覚を定位する―催眠術・千里眼・科学
第3章 ヒステリー―メディアのなかの病
第4章 読書としての文学史―文学史の「性」と「生」
第5章 出版バブルのなかのファシズム―戦時雑誌の公共性
第6章 近代的視線と身体の発見
第7章 「聴く」ことからの音楽
第8章 感覚の抑圧と近代主義
第9章 「障害者」差別に関する断想―一介助者としての経験から
著者等紹介
坪井秀人[ツボイヒデト]
1959年生まれ。名古屋大学情報文化学部教授。専攻は日本近代文学
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