出版社内容情報
「ロシア・コスミズム」と呼ばれる独特の精神史的流れが、十九世紀後半から二十世紀にかけてのロシア文化をつらぬいていることを明らかにする．．．．．。（立花隆『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』154頁、より）
内容説明
ロシアの大地に根ざし、近代科学技術に触発されて登場したロシア・コスミズムは、人間の不死復活、生命の謎、宇宙の生成からロケットによる宇宙開発など驚異的な思考と破天荒な想像力に満ち溢れている。本書はその代表的な六人の人物紹介と、彼らの主要な哲学・思想論文（本邦初訳）を収録する。
目次
序論 ロシアの宇宙精神
フョードロフ（「共同事業の哲学」；「科学と芸術の矛盾はどのようにして解決できるか？」）
ソロヴィヨフ（「自然における美」；「愛の意味」；「キリストは蘇りぬ！」）
ブルガーコフ（「経済のソフィア性」；「社会主義の魂」）
フロレンスキイ（「器官投影」；「ヴェルナツキイへの手紙」）
ツィオルコフスキイ（「宇宙の一元論」；「宇宙哲学」）
ヴェルナツキイ（「人類の独立栄養性」；「精神圏についての緒言」）
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
ロシアで「コスミズム」と呼ばれるこの傾向は「主義」なる立場を表す語と異なるという。この傾向を現代トランス・ヒューマニズムと比較する時、注意すべきは、矛盾を抱える運動という点だ。矛盾は個々人の思想の細部だけでなく、その技術的実践の際に生じる点をこのアンソロジー集は示唆する。それは、フョードロフのヌースフィア構想からビジョンを構築するソロヴィヨフよりも、科学的に捉え直したツィオルコフスキーが技術化を可能にし、その独占的な開発段階に入ると、フョードロフの全父祖の復活という倫理ビジョンの間に顕在化するかに思える。2019/09/14
kinka
6
屍者の帝国関連で読んだフョードロフ伝が意味不明なほど面白かったので、同じ著者の同ジャンル本。フョードロフから連なるロシアコスミズムの論客達の略歴と著作の抄訳、著者による長めのコスミズム概観から成る。弟子筋になればあのぶっ飛んだ狂気も薄まるかと思いきや、益々拗らせた人が一杯…なにこれこわい。大本は西欧の科学や思想の影響があって、特に顕著なのは進化論と実存主義。ただし、前者は能動進化論だの宇宙進化論だのに魔改造され、後者は正教と結びついて人間は意志の力で神に近づくとか言い出す。やばい。妙に論理的で又怖さ倍増。2015/06/08
LOVE弁慶
6
『あなたが生まれる前にも、あなたの物質は分散していた。しかし、そのことはあなたが生まれる妨げにはならなかった。』前考えてたことがこんなとこで活字になってた。2013/02/28
Toska
4
世紀転換期のロシアで展開された、奇矯かつ気宇壮大な思想体系。ツィオルコフスキーなどをピックアップして「宇宙開発の先駆け」と持ち上げることもできるのだろうが、本命はそれではない。人類が積み上げてきた科学と理性の集大成によって、「能動進化」を実現するという途方もなくハイテンションな方向性。宗教や神秘性をこそげ落としたら、実はボリシェヴィズムとも相性がよさそう（https://bookmeter.com/books/2226020 参照）。2023/11/10
trash
2
『屍者の帝国』副読本として。人間が宇宙を支配することで高次元の自由を手に入れて人間が不死になり、死者の復活も行う。。とか本気で行っている人達の論文がたくさんあるくるった感じが面白い。真面目に読もうとするとついていけなくなるので、適当に流しながら読むといいです（たぶん）。これは完訳ではないので他の論文も読みたいなぁ。。どこかで誰かがこっそり訳してくれないかな。2012/10/21
