内容説明
「尊王攘夷」の主張に代表されるように近代天皇制国家の思想的源泉として、また丸山真男や戦後の歴史家たちに単線的・因果的に捉えられてきた既成の水戸学像から離れ、「学問と政事は一つだ」という水戸学のスローガンに示唆を得て、藤田幽谷「正名論」や会沢正志斎『新論』などの書物のみならず、天保の改革(全領検地、藩校・郷校の建設)や天狗党の乱など幕末の水戸藩で生起した様々な出来事をもテクストとして読み解き、武士階級とそれ以外の平民がいかにして「歴史的主体」となりえたかという、イデオロギーのダイナミズムを鮮やかに描き出す。「思想史研究」の方法に対して、根本的な見直しを提起する、米国シカゴ学派の日本研究を代表する著書。
目次
第1章 正名と神話
第2章 国体
第3章 表象としての改革
第4章 平民の徴募
第5章 天狗党の乱―儀礼と行動
終章 テクストとしての水戸イデオロギー
感想・レビュー
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ノリピー
2
自分は専門家じゃないけど、ハマった。体系的に江戸の思想の変遷とそれをバックボーンにして生まれた後期水戸学という風に説明してくれるので、歴史という大きな流れの文脈を捉えた上で水戸学のあれやこれやを知ることができた。これがアメリカ人の著作とは......。倒幕運動の中心的イデオロギーである尊王攘夷思想が御三家の水戸から生まれたという矛盾も、本書によればそれはテクストを読む側の解釈の相違によって生じた必然的な誤謬だという。なるほどねー。これ程の影響を及ぼしといて水戸は内紛であえなく人材の焼け野原。なんかなー。2017/01/08
ut_ken
0
水戸内部のみならず、山崎闇斎や荻生徂徠の学派との関連も論じているのは、他には見かけなかった。2012/04/02