内容説明
職を失い、住まいを奪われる人たち、団地で進む高齢化と孤独死、規制緩和がもたらしたいびつな住環境…。人権としての居住権が軽視され、住まいの安心・安全が脅かされている日本社会の現状を詳細に報告。社会政策から経済対策へと変容した、戦後の住宅政策の軌跡を検証し、諸外国の実態をもとに、具体的な打開策を提言する。
目次
第1章 住む場がなくなる
第2章 いびつな居住と住環境
第3章 居住実態の変容、そして固定化へ
第4章 「公」から市場へ―住宅政策の変容
第5章 諸外国に見る住宅政策
第6章 「居住の貧困」を克服できるか
著者等紹介
本間義人[ホンマヨシヒト]
法政大学名誉教授。1935年東京都生まれ。早稲田大学卒業。毎日新聞社編集委員、九州大学大学院教授を経て、2006年3月まで法政大学教授。専門分野は都市・住宅政策、国土・地域政策。1984年東京市政調査会藤田賞特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
16
ハウジングプア層(3頁~)。ネットカフェ、カプセル、簡易旅館、ファストフード・・・にて夜を過ごす、最悪路上。今朝のラジオでは2畳という脱法ハウス問題も小耳にはさんだ。恐ろしい時代である。それでいて、民主党政権になったときであっただろうか、国会議員の宿舎問題で税金使って安く住んでると批判されていたのである。限界団地(45頁)。孤独死問題(52頁~)。これらは、今では相当に、無縁社会として認知されているが、4年前には指摘されていたことがわかる。それにしても、ウサギ小屋との揶揄もあった時代から進化どころか退化。2013/08/05
二人娘の父
9
住宅政策を公助としてとらえ、社会保障の一つとして再構築すること。10年以上前の著作だが、この提案は未だ有効。丸山里美さんのホームレス調査に関連して読了。2021/06/05
Humbaba
7
人が生きていくためには,住居は必要不可欠のものである.そして,その根幹を整備するためには,適切な住居政策が必要になる.しかし,日本はそれを怠ってきている.そのため,社会弱者は劣悪な住環境に押し込められてしまっている.2013/02/16
半木 糺
5
戦後日本の住宅政策の歴史と問題点を概観できる書籍。2000年代以降の新自由主義的政策で住宅政策そのものが骨抜きにされてしまう経緯も詳しく記されている。また、戦前に内務官僚で大阪市長でもあった関一の住宅政策が紹介されているが、非常に先進的な内容で驚いた。現在の日本の住宅政策はむしろ昔よりも退化してしまっているのではないか。2018/07/10
ことぶき あきら
2
公営住宅、公団住宅、公庫住宅の三本柱で進められてきた戦後日本の住宅政策であるが、公的セクターによる住宅供給は、「官から民へ」の流れの中で風前の灯火である。住宅建設を経済政策としてとらえ推進された持ち家政策、公営住宅等の公的住宅の所管が厚生省ではなく建設省であることなどの問題もある。健康で文化的な最低限度の生活を営む上で、また国民にとって誰でも必要な住居。権利として政策的にもっと重視させるべきであると思います。2017/04/30