出版社内容情報
折口信夫による『万葉集』の各歌の口述による現代語訳という画期的な試みである.上巻には巻一から巻八までを収める(全三巻、解説=持田叙子).
内容説明
折口信夫は、『万葉集』の全体を当時の読者にも親しんで読めるようにした。さらに口述による現代語訳で古代の人々の思いが篭った歌を直に味わうという、画期的な試みをおこなった。本書により『万葉集』は、広く国民に愛読される古典となった。上巻には巻第一から巻第七までを収める。(全三冊)
著者等紹介
折口信夫[オリクチシノブ]
1887‐1953年。民俗学者、国文学者、詩人・歌人(釈迢空)。大阪生まれ。國學院大学国文科卒。中学校の国漢教師の後、1921年、國學院大学教授。1928年、慶応義塾大学教授。民俗学、国文学研究で独自の領域を開拓した。文学者としても、1925年、処女歌集『海やまのあひだ』刊行以後、多くの詩集、歌集、小説を残した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
79
かの折口信夫が若き日にふるさと大阪の中学を辞職し、あてもなく上京。実家の送金も尽き、蔵書やきものを売り、友人に借金し……。友人にあの武田祐吉がいる。折口の万葉集愛(すべての歌を中学生にして諳じ、万葉集に出る山や川を知り尽くしていた)を知る武田は、折口に万葉集の現代語訳を勧める。2022/02/17
古西 広之
4
口訳万葉集(上) / 折口 信夫 令和の引用元を読んでみようと思ったけど、これは大変な読み物でした。 件の令月は後半に出てきます。「れいげつ」ではなく、「よきつき」とルビが振ってあります。 実に様々な人が短い歌の中に深い心情や感動を詠んでいることに驚き、現代より教養が高いように感じます。 どの歌も、さらっと読んで意味のわかるものがない上、ルビがなければ読めない言葉も多い、自分は外国人かと思ってしまう。 ただ、万葉言葉の優しさを感じ取れることだけは、日本人DNAのなせる技かも。2019/04/18
すいれん
4
原文と訳文。するする入っていく感じがする。あらためて読んでいくと、熱愛や失恋、死別や別離、左遷されたり、いらいらしたりむかむかした、ほっこりしたり悟りをひらいたり。感情も環境もあんまり人間は変わらないんだなぁと思う。万葉集に限らず、和歌は自分の感情とリンクする瞬間が好き。以前文庫の全集が古本屋にあって、セット売りじゃないとダメだと言われ、なくなく諦めた事を思い出した。2018/10/06
飯田一史
3
万葉集の歌全てを一人で現代語訳し、佳作・傑作には短評も加えた驚異の仕事。天皇を讃えた人麻呂や額田王の恋の歌などを、内容のみならず声に出したときの音律を軸に独自の評価を下す。2019/01/09
uru0H
3
軽快で読みやすい。各地方の方言までは訳されず、とことどころ訳者の訛りが訳語に出ているらしいが読んでいて支障はない。時の流れを感じる歌もあれば、何千年も昔の人もこんなことを思うのかと親近感を抱かせる歌もあり想像以上に面白かった。俗っぽく云えば古代Twitter。最後に掲載される解説にもあるように、「文学ではない文学」。人々の笑いや泣き声がいまにも聞こえてきそうなほどに、歌一つひとつは暮らしのなかで生まれる活力で満ち溢れている。ときおり訳語末によせられる訳者自身の歌への評価にも注目してみるといいかもしれない。2017/04/15