岩波現代文庫
未来からの遺言―ある被爆者体験の伝記

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  • サイズ 文庫判/ページ数 251p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006032463
  • NDC分類 916
  • Cコード C0136

出版社内容情報

吉野啓二さん(仮名)が語った被爆者としての半生は,きわめて具体的で未曽有の衝撃力を備えていた.だが感動的なその証言の中に大きな謎が含まれていたことが判明する.果たして吉野さんは幻を語ったのか.被爆者の声を生涯記録し続けた著者が,吉野さんの軌跡に寄り添い,被爆者とは何かを根底から問い直した衝撃の一冊.待望の復刊.(解説=今野日出晴)

内容説明

千人を超える原爆被爆者の肉声を録音し記録してきた著者にとって、長崎で被爆した吉野さん(仮名)が辿った半生ほど心を打つ証言はなかった。だが感動的なその語りに、無視できない謎が含まれていることが判明した。吉野さんは幻を語ったのだろうか。終生にわたって被爆者の声を記録し続けた著者が、被爆者とはだれであるのか、被爆体験とは何なのかを根底から問い続けて記した入魂の一冊。

目次

出会い―集会場にて
吉野啓二被爆を語る
「原子爆弾の効果」―私の被爆者論
暗転
被爆太郎の誕生
山峡の村で―死者を死せりというなかれ

著者等紹介

伊藤明彦[イトウアキヒコ]
1936‐2009年。ジャーナリスト。東京都生まれ。1945年長崎市にて入市被爆。早稲田大学卒業後、長崎放送に勤務しラジオ番組「被爆を語る」を制作。71年同社を退社後、自費で被爆証言取材活動を続け一〇〇三名の音声証言を基に作成したテープ・CDを全国の資料館・図書館に寄贈。晩年はビデオによる被爆証言の取材に従事。2006年、日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞特別賞受賞。2008年、吉川英治文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

J.T.

6
被爆者の証言を集め始めた著者に、決定的とも言える、被爆の体験談を語ってくれた吉野さん。その吉野さんの話が実話ではなかったとしたら....。自分は被爆者ではないが、ややもすると「生と死の意味づけ」をせずにはいられない、脆い人間でもあるのだ。そんなことを再認識した。著者の取り憑かれたような仕事ぶりも凄い。2017/07/12

JunTHR

4
ものすごい。これは、これは一筋縄ではいかない。正直戸惑う。 被爆者の声を集め続けた伊藤明彦氏が出会った「ある被爆者」の語りは、他の誰よりも力強く伝わる圧倒的なものだったが、同時にある種の違和感を感じることもあり、悩んだ末に裏取りを取ろうとすると...という驚きの展開。 だが、それよりもその体験について考え続けた著者がたどり着く思考が、まったく一筋縄ではいかない境地。 2017/08/30

Voodoo Kami

3
全国の被爆者を訪ね歩きその声を記録し続けた(半分以上からは断られている)著者は、仮にその証言に誤りがあってもそれは「遅すぎた訪問者」である私達の責任だと言う。その著者が出会った一人の「完璧な証言者」の存在によって、「人間が人間の体験に耳を傾ける」ということはどういうことなのか、という根源的な問いが生まれる。被爆者が普通に周りで暮らす環境にいた私も深く考えさせられる書でした。ちなみに仕事で初めて暮らした大阪や東京では原爆投下日に黙禱サイレンが鳴らず、誰も特に気にしていないことに驚いた記憶があります。2020/12/15

う;へ;あ;は

2
感想として単純すぎるかもしれませんが、外から堂々と他者の生に意味づけを与えようとして後ろめたさを感じている風でもなさそうな文章に忌避感を抱いてしまいました。2018/09/04

leekpuerro

2
長崎の原爆のせいで悲惨な人生を過ごした男がいた。しかし、その証言には事実と違う部分があった。そんな人を発見したら、矛盾を暴こうとするのが普通だ。だが、何故こんな矛盾が生まれたのか?そう考えた事で素晴らしいノンフィクションになった。2013/12/30

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