出版社内容情報
檜垣 立哉[ヒガキ タツヤ]
著・文・その他
杉山 直樹[スギヤマ ナオキ]
解説
内容説明
「生の哲学」を提唱しノーベル文学賞を受賞した、フランスを代表する哲学者、アンリ・ベルクソン(一八五九‐一九四一年)。旧来の哲学を根底から批判し、転覆させたその哲学は、ドゥルーズの革新的な解釈によって見事に蘇る。全主要著作を誰よりもクリアかつ精密に解説する本書は、難攻不落の道程を踏破するための最良のガイドである。
目次
序章 ベルクソンの哲学とその位置
第1章 連続的で異質的な持続―『試論』について
第2章 知覚の機構と実在する過去―『物質と記憶』について(純粋知覚について;記憶と認識の機制;記憶の即自存在とその心理的な働き;持続の存在論)
第3章 分散する一者としての生命―『創造的進化』について
第4章 持続の一元論/結晶と層―ベルクソンの存在論について
著者等紹介
桧垣立哉[ヒガキタツヤ]
1964年、埼玉県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
15
ベルクソン論であると同時にベルクソンを読むドゥルーズ論。フッサール~ハイデガー以降の現象学徒にとってベルクソンはすでに乗り越えられた遺物だった。その認識を反転させたのがドゥルーズ。実在を正確に認識するために、すべてを動的に描き出す哲学。運動に忠実であるがために、ベルクソンは量化できない質的差異を強調し、変化の可能性を常にもった潜在性を物に見出す。「差異」「潜在性」はドゥルーズ哲学のキー概念としても知られる。認識論における二元性と存在論における一元性の両立が本書のポイントだろうが、まだ整理できていない。2023/05/12
koke
14
進化や相対性理論が論じられるところで挫けそうになったが、ベルクソン哲学の二つの次元を分けて説明していくスタイルは明快でよかった(認識論と存在論、差異化と統合)。ただ解説にもあるように、この方法からは「一にして全」なる存在というヤバそうな結論が導かれる。『動きすぎてはいけない』で言われていたのはこういうことか。2022/11/14
yanagihara hiroki
7
ベルクソンの主著はだいたい読んだが、ベルクソン研究者の本は一冊も読んでいないので、その勉強の一つとして。ベルクソン読者にはわかりやすかったが、しかしこの本をベルクソンを読んでない人が読んでわかるのか、という問題もあるように思う。ドゥルーズによるベルクソンの再評価の流れがとてもよく分かる一冊。ベルクソンの主張というのは多岐にわたりすぎるのと壮大すぎて、ある意味検証のしようのない「妄想」でしかない。ただその「妄想」は我々に様々な面でradicalな示唆を与えてくれる「妄想」でもある。それが伝わる本だと思う。2022/10/04
ゆきだるま
5
現実側のイマージュと、認識する側のイマージュは同じもの、程度の違い。記憶(過去)と現在との関係も同じような構図。あと、とにかくすべては流れ。現実も生命も。そして最終的にはすべて一に集約される、などと、基本のイメージを(イメージできないということも含めてのイメージを、、)作ってくれた上で説明を展開してくれて、おぼろげながらもしっくりくるものがあった。あとがきにあるようにファンタジックといわれたらそうなのかなあ、だけど、一つ一つの生物を大きな一つの流れと捉えるのはなんとなく自分が思い描いてたことと重なるな。2023/04/30
wengou802
3
「生命体とは、知覚世界の側から発せられてくる多様な光を浴びながらそこに屈折を生じさせ、いくつかのラインを消滅させつつ生命体にとって有効な事態を弁別していく働きとして描かれる」(p.19)。このイメージが助けになった。 以下は特に印象に残った点。 実在は、現れの断片から構成される潜在的なもの。自己根拠的であることの裏返したる無根拠さへの諦観こそが、自由。 生きること、流れの屈折装置として在ることは、流れへの吸収に抗して自己を維持すると同時に、変わり続ける流れの一部としてある瞬間の自己を解体することである。2022/09/14
-
- 和書
- 幻影の書 新潮文庫