出版社内容情報
人はなぜ宗教に心打たれ、支えられるのか?宗教が生活から離れた今、それを解くカギは近現代の童話・小説の中にある。古今東西の物語を素材に読み解く、かつてない宗教入門!
内容説明
神仏が素朴に信じられた時代から、それが相対化された現代に至るまで、なぜ人は宗教に心打たれ、支えられてきたのか?今、この問いを解く鍵は、個々の教義や歴史ではなく、近現代に作られた物語の中にある。宮沢賢治、トルストイなどの宗教作家から、カズオ・イシグロ、西加奈子など現代作家の物語まで。「死」「弱さ」「悪」「苦難」という四つのキーワードを通して、宗教学の泰斗が宗教とは何かをやさしく解きほぐす。
目次
序章 宗教は物語のなかにある―人は「四つの限界」の前にたたずむ
第1章 「死」を超える
第2章 「弱さ」と向き合う
第3章 「悪」に向き合う
第4章 「苦難」を受け止める
終章 重なり合う宗教と物語の力―現代文学のなかの宗教
著者等紹介
島薗進[シマゾノススム]
1948年、東京都生まれ。宗教学者。東京大学名誉教授、上智大学大学院実践宗教学科教授、同グリーフケア研究所所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
57
遠藤周作「深い河」の考察は面白い。そこまで読み取れていなかった。2019/12/09
ネギっ子gen
42
宮沢賢治、トルストイなどの宗教系作家から、カズオ・イシグロ、西加奈子など現代作家の物語まで、「死」「弱さ」「悪」「苦難」という四つのキーワードを通して、宗教学の泰斗が「宗教とは何か」を優しく解説する。<物語を読むのが好きで、人生の途上で読み耽った時期が何度かある/一方、宗教について学び考える宗教学が一生の仕事となった。特定の宗教を深く信仰することはなかったが、神道や仏教やキリスト教が次第に身近に感じられる/こんな事情だから、何とか「物語」と「宗教」とを同じ枠組みで考える場を持ちたいと考えたのは自然>と。⇒2021/11/26
活字の旅遊人
36
新書なのに、読み終わるまで結構な時間が。使われる作品が面白そうで、その章に入る前に気になるものを読んだから。『イワン・イリイチの死』、『ひかりごけ』、『楢山節考』、『苦海浄土』『なめとこ山の熊』はこのタイプ。本書の紹介は読んでしまったけど、この先読みたいのは、『きりこについて』、『呪文』、『わたしを離さないで』、『想像ラジオ』。既に読んでいて納得しているのは、『深い河』、『人魚姫』、『チェルノブイリの祈り』。死、弱さ、悪、苦難。体系化されていない場合も含め、やはり宗教、信仰はホモ・サピエンスの拠り所だ。2021/04/07
hk
17
【序章のあらまし】人間の知力ではとうてい解決しきれないものが4つある。それは…①死②弱さ③悪④苦難…だ。この人知を超えた事象に解を与えてくれるものが宗教である。(余談だがこれら答えのない問いに挑み続ける態度を「哲学」っていうんだぜ)。人間の限界を超えたものに対し人に代わってケリをつけてくれるのが宗教であり、悪く言えば知的怠慢や思考停止となる。そして宗教の教義はえてして小難しい文言が並んでいて一筋縄では理解がおぼつかない。そこで多くの宗教が聖典の中に虚構や創作いわゆる物語を挿入して理解を促している。 2018/02/27
to boy
17
物語には著者の宗教観がにじみ出てくるというのは理解できます。そしてこの本も仏教学者としての物語のとらえ方が明らかになっています。そうか、こんなふうに読み取ることができるのかって大いに感心しました。「きりこについて」「楢山節考」「想像ラジオ」がとくによかった。再読してみたくなってきました。2016/12/24