内容説明
世界のグローバル化に直面して、私たちは内向きになるべきでない。なぜなら、それでは普遍的な人権を、難民の人権を守れないからだ。しかし、人権とは自明なものなのか。いまこそ人権概念を問い直そう。本書はこの課題に、人権と尊厳、法と道徳、人権と政治という観点から哲学的に応えようとする。
目次
第1部 人権と人間の尊厳(人間の尊厳の媒体としての人権;人間の尊厳と人権)
第2部 人権をめぐる法と道徳(人権は道徳的権利か;道徳的権利ではなく、法理的権利としての人権について;カントにおける法と強制)
第3部 人権と政治(共和国、あるいは人間であるための空間―カントの「甘い夢」とその影;カントと「改革」の問題)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
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カントの「世界市民の哲学」は、「世界概念による哲学」とも呼ばれる。「世界概念」とは「あらゆる人々が必然的に関心を抱くものに関わるような概念」(29頁)。人権というものは、近代の政治・社会・経済の体制と制度とその発展のうちに潜む脅威や危険を見抜くことによって生まれたものだと言うことができる。国家や社会、経済システムは人を支配する潜在的な力をもっており、現実の脅威となる(71頁~)。113頁などに見られた、ハーバーマスの「世界市民的共同体」は、「グローバル公共圏」でもあると思われる。2018/04/19