内容説明
知的財産法の重要テーマに果敢に挑む野心作。自由闊達な議論を交わすことをモットーとする当研究会が、その気風に満ちた論文を3周年記念として編んだ注目の書。知的財産法を研究することの面白さが伝わる刺激的な一冊。
目次
第1部 知的財産法政策の再構築(Robert P.Mergesの知的財産法概念論の構造とその意義;知的財産権と非経済分野の公共政策との調整をめぐる法的問題―タバコのプレイン・パッケージ規制を素材として;競争政策と知的財産政策の協働の一側面―標準必須特許に基づく侵害訴訟とその制限;現代美術と著作権法―インセンティブ論に関する一考察)
第2部 日本の知的財産法の現在(等価理論(均等論)の現在―裁判官の所説を中心として
特許権の取戻しと善意の第三者の保護
冒認を中心とした無効理由の主張立証責任―特許無効に関する特許法の規範構造
知的財産権の共有と損害賠償額の算定―1項と3項の関係を中心に
パブリシティ権再論―人格的要素の「私的所有」)
第3部 国際的視野からの検討(欧州特許条約とフランス法における医療関連特許と生命倫理;インド特許法における強制実施制度―その変遷と現状;デジタルコンテンツの中古販売と消尽の原則―欧米の近時の動向)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまやま
8
研究会のレポートのまとめであり、特定のテーマに沿って展開しているものではないが、いくつか興味深いレビューがある。マージェスの「知財の正義」の要約では、根本原理として社会は創作物に対して排他的権利を「創作したから」という事実のみで必ず付与しなければならないのか、という自由主義からの疑念と、しかし、原理はともかく、「現行」制度の存在を所与としてネットの便益が可能な限り最大化できるように組み立てることは合理性があるという二層の論理を立てて、功利主義のみが知財法規を律することに思想的な転換を迫っている。2021/04/24