出版社内容情報
性格、自由意志、知能……。心理学はこれらをテーマとする「科学」である。俗説や疑似科学を退けて本物の心理学のあり方を提示する。
内容説明
「性格はどこまで遺伝で決まるか」「自由意志は存在するか」「記憶力は鍛えられるか」「暴力的映像は暴力を引き起こすか」―これらの問題に意味のある答えを出すには、哲学や日常的実感では力不足。科学としてのアプローチが必要なのだ。インチキ、俗説、疑似科学を退けて本物の心理学のあり方を提示しつつ、今、心理学がどこまで到達しているのかを平易に紹介。心理学、最初の一冊。
目次
第1章 心理学とは
第2章 人柄は遺伝で決まるか
第3章 人間は賢いか
第4章 意識の謎
第5章 記憶は確かか
第6章 人と人の間で
第7章 異常な世界へ
著者等紹介
村上宣寛[ムラカミヨシヒロ]
1976年京都大学大学院修士課程修了。現在、富山大学人間発達科学部教授。認知心理学の研究、統計分析、性格測定に関するプログラム開発、評論活動に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
111
「性格はどこまで遺伝で決まるか」「自由意思は存在するか」「記憶力は鍛えられるか」「暴力的映像は暴力を引き起こすか」など、興味深いテーマが盛り沢山でしたが、専門用語が多くて正直、私には難しくてついていけなかった部分も。本書を読むにはある程度、心理学の知識があった方がいいかもしれません。ただ、此処で語られる「心理学」は今現在、巷に溢れる「心理学」とは全く違うことは解りました。記憶力は練習しても鍛えられないという結論は衝撃的でした。また他の本で予備知識を増やしてから再読したい本です。2016/04/11
kenitirokikuti
9
本棚の整理中にみつけてなんとなく再読した。心理学は前々世紀前世紀のロマンチックなアイディア群を容赦なくゴミ箱に放り込んでゆく▲トラウマ理論について。嫌なことは細かいことまでよく記憶に残り、たびたび鮮明に思い出されてはひとを不快にさせる。トラウマ説は、忘却された不快な記憶が悪影響を及ぼすというもの。最初から成り立たない▲自由意志論。われわれの自意識は、寄生虫みたいなもんかもしれない。思うより前に体が動くというのはレトリックでなく事実である▲〈哲学は反省という方法で問題を提起できるが、問題を解決できない。〉2021/11/25
greenman
9
現代心理学がいまどこまで到達しているかを、さまざまなデータや実験の紹介をしながら解説する。本書を読むかぎり、心理学・哲学・脳科学の領域が重なりあって、いまの心理学が形成されているように感じる。ただ著者の村上氏は、日本の臨床心理の状況に対して不信感をもっている。普段の心理本を読むつもりで本書を読むと、「心理本」と「心理学」の違いに強い違和感をもつだろう。いずれにせよ、ある程度統一した調査研究はもっと活発化していいように思う。2010/04/07
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺
6
※優生思想を肯定していると取られても仕方ない箇所があったので該当個所を削除して再掲。ナイスをしてくれた方々には申し訳ありません。2009年著。著者は富山人間発達科学部教授。 世の俗説や疑似科学を片っ端から否定する内容で、雑学本よりは本格的。最初に挙げられているのは心理テストで、これは精神科医の野田正彰氏も同じ事を言っている。 最初に科学とは何か、科学的手法について書いてある。これらはコロナ関係の論文を紹介しているアカウントを巡回している時に常識として知った事柄だった。→続く2022/09/30
壱萬弐仟縁
6
図1・1に示された図式は重要だ。組織的な手続きを経ないデータはゴミ(022頁)。心理学は統計を使う(039頁~)。「統計解析を本当に理解するためには、それぞれの解析法ごとに専門書を一冊」(040頁)の指摘は的を射ている。心理学に限らず、科学であるなら分析法の中で統計知識は不可欠なのがよくわかる。そういえば、心理学というとオペラント条件付けの野良猫の行動について何回もレポートを書いたが、愛猫ジニー(082頁~)をみると、結局Dのままだったのを思い出した。記憶の練習は記憶力を鍛えない(161頁)とはショック。2013/03/06