出版社内容情報
巨額の税金を投入しても、一向に改善しない少子化問題。少子化対策をめぐるパラドクスを明らかにし、この問題に最終解答を与える!
赤川 学[アカガワ マナブ]
内容説明
人口減少がこのまま続けば「日本は即終了!」といった、絶望的な指摘をする人が少なくない。実際、四半世紀以上にわたって巨額の税金が少子化対策のために注ぎ込まれてきたが、改善の兆しはほとんど表れていない。それどころか、少子化対策に力を入れれば入れるほど効果が薄れるパラドクスが見て取れるという。なぜか?いかなる理由で少子化は進むのか?すべての問いに最終的な解答を与える、少子化問題の決定版である!
目次
序章 「希望出生率」とは何か?
第1章 女性が働けば、子どもは増えるのか?
第2章 希望子ども数が増えれば、子どもは増えるのか?
第3章 男性を支援すれば、子どもは増えるのか?
第4章 豊かになれば、子どもは増えるのか?
第5章 進撃の高田保馬―その少子化論の悪魔的魅力
第6章 地方創生と一億総活躍で、子どもは増えるのか?
著者等紹介
赤川学[アカガワマナブ]
1967年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科社会学専攻博士課程修了。博士(社会学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科准教授。専門は社会問題の社会学、歴史社会学、セクシュアリティ研究、人口減少社会論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
28
出生率向上を掲げ、少子化問題の解決を掲げる安倍成長戦略。しかし、いたずらに少子化でもたらされる不安をあおることは慎重でなければならないと思いました。そもそも国家が少子化対策という名で産む産まないという個人の自由の問題に踏み込んでいることに違和感をも感じました。本著では、様々な社会調査や統計を用いながら、少子化対策のために行われる政策が出生率向上と必ずしも結びついていないことを明らかにしています。本著では答えまでは出ているわけではないと思いますが、人権・権利の視点で人口問題も考える必要性を感じました。2017/08/16
skunk_c
17
未読だが。『子どもが減って何が悪いか!』に強い興味を持っていたので、その著者の新刊ということで早速読んでみた。前半の現政権の「少子化対策」とその根拠になっている論説などを、統計をもって一刀両断に切り捨てる部分は爽快なくらいで面白かったが、後半の著者の考える少子化要因分析には不十分なものも感じた。例えば低開発地域の「子だくさん」は、社会保障未整備の中での家族労働力期待が大きな要因だが、それと日本の低所得者の多産傾向をない交ぜにするのはいかがなものか。総じて人口学の成果に対する知見が乏しい印象を受けた。2017/02/18
まゆまゆ
13
少子化対策として行われる政策は、実は実効性に乏しく出生数の上昇につながっていかないことを明らかにしていく内容。政策が人々の期待水準を高めると、さらに生活期待水準が高まり、結果として出生数が低下するという。むしろ少子化と煽らずに、一人で生きていくための条件を整えた方が、結果として出生数が増える可能性がある、と。男女平等と格差対策、少子化対策の三つは同時には成立しないというのも納得。2017/03/08
HERO-TAKA
12
膨大なデータを収集し精査し、現在の少子化問題とその政策について疑問を投げかける一冊。我々の思い込みを一刀両断していく図は気持ちがいい程だ。ただ、人口減はともかくとして、年齢別人口が逆ピラミッドになっていることが問題であり、子どもが減っても大丈夫という作者の思想には共感しかねるし(その辺は前著を読もうと思う)、タイトルに反して結論は出ていない(というより「余白が足りない」のよう敢えて記さないとしている。それが1番の少子化対策だと)。理解を深めるため何回も再読しておこうと思う。2017/04/22
マネコ
11
いろいろな少子化問題の本を読みましたが心情的にこちらが一番参考になりました。問題を大きくすればするほど閉塞感から子どもを育てるのは難しいと感じます。フランスの人類学者のトッドは「どうも日本人は結婚ということを厳密に考えすぎている。もっと気楽に結婚して、離婚してもいいと思います」という提言をしています。確かに聖域にし過ぎて完璧を求めて適齢期や出会を逃しているのは事実だともいます。世界は金持ちと貧乏人の子だくさんで、中間階級は教育のため1人しか持たないという指摘もあり、少子化解決のヒントがあります。2019/11/13