出版社内容情報
奴隷制開始からブラック・ライヴズ・マターが再燃する今日に至るまで、人種差別はなくなっていない。アメリカ黒人の歴史をまとめた名著を改題・大改訂した新版。
内容説明
奴隷制が始まって以来、黒人は白人による差別や迫害に常に遭ってきた。奴隷船やプランテーションでの非人間的な扱いを生き延び、解放され自由民になっても、「約束の地」である北部に逃れても、彼らが人種差別から解放されることはなかった。四〇〇年にわたり黒人の生活と命を脅かしつづけてきた差別と、地下鉄道、公民権運動、そしてブラック・ライブズ・マター(BLM)に至る「たたかい」の歴史を、アメリカ南部出身の著者が解説する。
目次
第1章 アフリカの自由民からアメリカの奴隷へ
第2章 奴隷としての生活
第3章 南北戦争と再建―一八六一~一八七七
第4章 「ジム・クロウ」とその時代―一八七七~一九四〇
第5章 第二の「大移動」から公民権運動まで―一九四〇~一九六八
第6章 公民権運動後からオバマ政権まで―一九六八~二〇一七
第7章 アメリカ黒人の現在と未来
著者等紹介
バーダマン,ジェームス・M.[バーダマン,ジェームスM.] [Vardaman,James M.]
早稲田大学名誉教授。テネシー州メンフィス生まれ。専門はアメリカ文化史、特に南部と黒人の文化
森本豊富[モリモトトヨトミ]
1956年生まれ。早稲田大学人間科学学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
54
10年ほど前にNHKブックスから『アメリカ黒人の歴史』を出していて、その改訂版ともいうべき内容だが、トピックを交えて独立時の奴隷制、南北戦争後の特に南部の状況、第二次世界大戦後の公民権運動とその帰結、現在のBLMまで、黒人の置かれた状況、あるいはアメリカ社会のありように深い憂慮を示しながら、日本の読者向けに分かりやすく概説する。著者は日本での生活と研究・著作活動が長く、おそらく日本語を完璧に解している。したがって訳書とは思えない読みやすさだ。アメリカを理解するための必読書の1冊に加えて良いと思う。良書。2021/01/12
Aster
53
濃い一冊だった。「私はあなたのニグロではない」を観てから興味を持って手に取った。何かを考える前に、事実をまず知らねばならないと感じた。悲観的で冷笑的な態度は自分の一時の感情しか救わない。壮絶な歴史と人間に対して正面で向き合う機会を与えてくれた。2021/01/21
ロビン
25
1441年にポルトガル人がヨーロッパでアフリカ人奴隷の貿易を始めたことから始まり、2020年のジョージ・フロイド事件とBLMまで時系列順にアメリカ黒人の歴史を概説した一冊。白人たちの、黒人が自分たちと対等になったり、成功したりすることに対する抵抗感や嫌悪感の根強さには慄然とさせられる。白人の黒人に対するリンチや暴力行為があっても警察がまともに動いてくれず、裁判でも白人の陪審員が白人に有利な判決を下す絶望感。奴隷制の頃よりもいいとはいえ経済的・教育的格差も大きく、まだまだ本当に平等な社会への道のりは遠い。2021/06/07
kan
20
アメリカ黒人史が非常によく整理されていて勉強になった。政治史や法律の変遷を追いつつ文化史とも絡ませ、黒人に関するあらゆる物事を縦横無尽に網羅していて興味深い。翻訳も非常に良く、翻訳本と気付かなかったほど。構造的差別への戦いの歴史がよく理解できた。アメリカの大学院出願の際、人種や親の学歴に関する質問があった。アジア人でfirst generationな私は優遇を受けたのだろうと思う。人種的多様性や経済的背景を考慮し大学合格者を決定するアメリカは進歩的に見えるが、歴史的負債を抱えているとも言えると思う。2022/03/27
崩紫サロメ
20
奴隷貿易から現代まで、アメリカ黒人の歴史を総合的に叙述する。10年ほど前にNHKブックスから出たものの改訂版であるが、2013年以降の「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動についても多くの紙幅が割かれている。つまりこれは、黒人の命が大切に扱われていなかった歴史を表している。アメリカの黒人たちは自分たちの地位向上のために様々な方法を取ったが、個人的に興味を持ったのはブッカー・T・ワシントン(タスキーギ大学創立者)など教育関係。2021/06/09