出版社内容情報
福沢の思想は毀誉褒貶にさらされてきた。その世論の動向を見ていけば日本近現代史が見えてくる。福沢評価の変遷の系譜をたどり、福沢の実像を浮かび上がらせる。
内容説明
福沢の思想は毀誉褒貶にさらされてきた。それは福沢の議論の変化というよりも、福沢をとりまく世論の側の変化によるものといえる。福沢を評価した徳富蘇峰は、晩年には福沢が日本の伝統的な良風美俗を破壊したと罵倒。戦後は丸山眞男から原則ある実学思想家として賞賛されるも、朝鮮蔑視の脱亜論者として批判もされ、他方で一九八〇年代半ば以降は一万円札の肖像となり、文化人の象徴となった。福沢評価の変遷をたどり、その過程を詳細に考察。福沢の実像を浮かび上がらせる。
目次
序章 福沢を論じた知識人たち
第1章 存命期の論争―学者職分論から修身要領まで
第2章 死去―『福沢先生哀悼録』にみる「文明」の先導者
第3章 忘却から批判へ―大正期から太平洋戦争まで
第4章 華麗なる復活―連合国軍占領と横溢する賛美
第5章 「脱亜論」の主唱者として―戦後歴史学からの批判
終章 一万円札の肖像へ
著者等紹介
小川原正道[オガワラマサミチ]
1976年生まれ。慶應義塾大学法学部教授、東京大学大学院法学政治学研究科客員研究員。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は日本政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAN
12
一万円札でよく知っているはずなのに、キャッシュレスの時代で少し印象は薄くなっているのかもしれない。『文明論之概略』は、丸山眞男の論評本があるので読もうとしたけれど、挫折したまま。時代によってさまざまに評価が変わっているけれど、自分としては在野で、日本国の近代化に貢献した啓蒙思想家、教育者、そして家族を大事にしていたという人物像は非常に魅力的に映る。『学問のススメ』、『文明論之概略』はまず原文で読み、明治期を生きた生きざまをもう少し深堀りしてみたい。2023/11/20
スプリント
5
文明の先導者・新しい文化の先駆者というイメージから文化人のシンボルに代わっていく過程が理解できた。2023/11/04
takao
3
ふむ2024/05/15
ふら〜
1
福沢諭吉の評価の変遷。慶應の人、お札の人というイメージがあるが、実際に行った主張やそれが世の中からどのように見られていたかを時代を追って見ることができる。慶應生にとっては永遠の先生なんかな。2023/10/31