出版社内容情報
郷原 宏[ゴウハラ ヒロシ]
著・文・その他
内容説明
江戸川乱歩と松本清張。ミステリー界の大御所だって、悩みもすればグチもこぼす。創作はもちろん、ふたりがともに目指したのは何だったのか。それぞれの足跡をたどることで、その解を探す知的探求書。
目次
巨星墜つ
廃墟の草
古本と藁箒
一人の芭蕉
終わりと始まり
幻影の内と外
乱歩賞事始め
再生と新生
第四の山
「宝石」再建〔ほか〕
著者等紹介
郷原宏[ゴウハラヒロシ]
1942年島根県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。詩人、文芸評論家。74年、詩集『カナンまで』でH氏賞受賞。83年、評論『詩人の妻―高村智恵子ノート』でサントリー学芸賞受賞。2006年、『松本清張事典決定版』で日本推理作家協会賞(評論部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐうぐう
26
タイトルから、ジャンルを異とする乱歩と清張のミステリ論争を綴った内容と思った読者も多いのではないか。あとがきで著者が「清張が乱歩と論争をして徹底的にやりこめたので、以後本格派がふるわなくなったのだと思い込んでい」る人を紹介している。ミステリ史を振り返れば、清張の登場により従来の本格派が駆逐されていったかのような印象を受けるのは事実である(し、実際にそういった側面もあった)。だが、清張が乱歩と対立していたというのは、大きな間違いである。(つづく)2017/06/24
ユウユウ
23
乱歩も清張も本当にいいなぁと改めて。特に清張の初期の苦労話は興味深く、勇気を与えられるような気持ちさえこみ上げ、乱歩が『宝石』の再建に乗り出した話も胸が熱くなる。現代文学の礎を築いた2人の物語に魅せられる一冊。2020/10/16
田中峰和
8
「二銭銅貨」や「D坂の殺人事件」など初期の乱歩作品に影響を受けた探偵小説ファンは多いが、清張もその一人だった。軍部によりエログロ・猟奇・残虐趣味を禁じられた乱歩は、明智小五郎など少年向け作品しか書けなくなった。戦後ようやく本格長編に挑戦するがいずれも駄作。だが、作家クラブを結成するなど、後の推理小説ブームに果たした役割は図りしれない。一方高等小学校卒の清張は職を転々とし朝日新聞入社するも学歴差別を受け暗い人生のまま34歳で出兵。40歳を超えての作家デビューだが、その才は乱歩が探偵小説界の芭蕉と高評価した。2017/07/24
キートン
3
日本に推理小説という新しいジャンルの小説を定着させた「江戸川乱歩」。様々なジャンルの小説よりも劣るとされていた推理小説の地位を大きく向上させた「松本清張」。日本の推理小説を語るうえで欠かせない2人の巨人の足跡を、当時の社会情勢なども踏まえながら紹介していくという作品。 こうして読んでみると、2人には「敵対」という言葉はまったく不似合いだったということや、著者の別作品に「松本清張の持つ、強い学歴コンプレックス」という文章の意味もよく分かる。 そして個人的に思うのが、推理小説に対しての考え方とその結果が↓2019/06/17
go
3
両者が対立している様な印象は自分にもあったのだが、お互いに相当リスペクトしていたんだなという事が分かった。2017/11/17