内容説明
キリシタンの多岐にわたる翻訳の試みのうちには、異文化の出会う十字路で魂をめぐってせめぎ合う戦略のさまざまなかたちが刻み込まれている。その言語・文化・歴史にわたる精神のドラマをこそ読みとるとこ、その遠い反響をも聴きとること―キリシタン文献を文学研究の視覚から読みなおし未踏の領域を切り拓いてきた成果を集成する。
目次
1 布教と翻訳の戦略(キリシタンの日本語研究と翻訳の試み;キリシタン時代のスペインと日本;ヴァリニャーノと『日本のカテキズモ』 ほか)
2 キリシタン文学と言語・文化・歴史(魂とスパイスを求めて―大航海時代の宣教師たち・商人たち;キリシタンの声;ヨセフとその兄弟 ほか)
3 絵画と翻訳その他(受胎告知―キリシタンの翻訳と絵画;天国の鍵;南蛮屏風・両洋の十字路―洋人奏楽図屏風 ほか)
著者等紹介
米井力也[コメイリキヤ]
1955年生まれ。京都大学文学部卒業。京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。2001年、博士(文学、京都大学)。金蘭短期大学助教授、大阪外国語大学教授を歴任。専攻は中世日本文学(キリシタン文学)。大阪大学教授在任中の2008年10月、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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桑畑みの吉
4
2009年12月発行。著者が各種雑誌媒体に掲載した論文をテーマに沿って収録したものである。1549年のザビエル来日、キリスト教を普及させるには教義の日本語化が必要だった。悪魔という概念を最初は「天狗」と訳したり、キスの日本語翻訳に苦心したとか、直接関係ない『イソップ物語』の活用といったエピソードが面白かった。反面、古文書から引用があるが、現代文への翻訳がないのは非常に読みにくかった(この手の専門色の強い書籍にはありがち)。余談だが、著者は1955年生まれ、2008年逝去とある。その早すぎる死を残念に思う。2024/04/19