出版社内容情報
実在が疑われていた正妻・玉日姫(たまひひめ)の骨壺が発掘された! 従来の定説をくつがえす発見と、伝承資料を丁寧に批判的に読み解くことで、親鸞の本当の姿に肉迫する!
内容説明
親鸞の生涯は謎につつまれている。「なぜ法然へ帰入したのか」「正妻・玉日姫は実在するのか」「越後配流の真実とは?」「なぜ息子・善鸞を義絶したのか」…。これまでの研究では解ききれなかった謎が、適切な「史料批判」と丹念な読み解き、そして、玉日姫の墓所での「新発見」から明らかになる。従来の研究の限界を超えて、真実の親鸞に肉迫する。
目次
序章 新しい親鸞像をもとめて
第1章 延暦寺での入室と出家
第2章 親鸞誕生と家族
第3章 官僧としての親鸞
第4章 遁世僧、親鸞―法然のもとで
第5章 建永の法難と越後配流
第6章 関東での布教
第7章 再帰京と『教行信証』
第8章 善鸞義絶
第9章 親鸞の死
著者等紹介
松尾剛次[マツオケンジ]
1954年長崎県生まれ。東京大学大学院博士課程を経て、山形大学人文学部教授、東京大学特任教授(2004年度)。日本中世史、宗教社会学専攻。1994年に東京大学文学部博士号を取得。日本仏教綜合研究学会元会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たいけい
2
従来の明治以降の実証主義的な史料のみに基づく親鸞像ではなく、考古学的成果や史料批判を通じて、言い伝えや伝承の中でしか語られてこなかった親鸞像を鮮やかに浮かび上がらせています。特に玉日姫の実在や流罪以後の帰京を論証する記述は、緻密な論理に基づいて組み立てられた推理小説のような印象すら受けました。限られた史料を鵜呑みにするのでなく、適宜に批判しながら使い、これまでの親鸞の伝記の中で語られなかった・触れられなかった事柄を明らかにしようとする筆者の姿勢には、おおいに考えさせられました。2014/06/25
sonsan
0
2人と結婚していたことを知った。やや読みにくい。2013/07/30
日暮里の首領様
0
実証的な歴史学による、地味だが納得のいく論考。よく言われる鎌倉期仏教界の秩序紊乱に対する動きとしては、所謂「鎌倉新仏教」よりも律宗の戒律復興運動の方が圧倒的に影響力が大きく、そこに善鸞義絶の背景があった…などなど、それなりに面白い発見も。何より僧侶妻帯と並んで、「個人」を明確に救済対象に見定めたところに親鸞の独創性を見出すところは、白眉。「弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずればひとへに親鸞一人がためなり、さればそれほどの業をもちける身にてありけるを、たすけんとおぼしめしたる本願のかたじけなさよ」(歎異抄)。2012/11/27
プリン
0
史料的な価値の低いと見なされてきた『正明伝』なども活用して、親鸞の実像を描いていこうとする評伝。本書の特徴は、親鸞が九条兼実の娘玉日姫と結婚したことを事実とする点にあります。しかし、先行研究に対する批判や論証はしているものの、結論ありきな議論でしかない印象を強く受けました。内容も『親鸞再考』の方がまとまっていた感があります。2012/10/25
鈴木貴博
0
親鸞の生涯について、これまでは史料価値が低いとされてきたものも史料批判をしつつ活用し、発掘調査の結果なども踏まえながら、謎や空白に迫る。家族・日野一族の謎、母は誰か、九条家の姫・玉日姫との結婚は事実か、恵信尼との出会いの経緯は、建永の法難と越後配流の背景は、流罪赦免後一旦帰京したか直接関東へ行ったか、関東へ行った理由は、鎌倉幕府との関係は、関東から帰京した理由は、善鸞義絶事件の背景は、等々、多岐に亘る事項について見解が示され、また、時にそれが通説と大きく異なるものであり、興味深く面白く一気に読了。2019/02/25