内容説明
植民地帝国とその地理的・思想的・歴史的周縁における、故国喪失者たち。16~20世紀のアジアの諸地域において、移住や亡命を強いられた人々。自らのアイデンティティーの揺らぎや危機に直面しながら、その再構築を模索する彼らの姿を、1930年代の「転向」現象を中心にして描く。
目次
序論 アジア・ディアスポラ―植民地近代における他者性について考えるとは何か
第1部 近世(early modern)における植民地主義と言説空間(十六世紀の海港都市「堺」の記憶と表象;前近代における怪異譚の思想変節をめぐって;近世ユーラシア帝国と十八世紀後半日本の知識人)
第2部 植民地近代のアイデンティティー(自治から自衛への転機―龍済光政権の地方自治政策と広東地域エリート;海を渡る源義経―貴公子の悲劇とその語り手の系譜;翻訳から見る昭和の哲学―京都学派のエクリチュール;日本統治期台湾の女学生像―楊千鶴の日本語創作をめぐって)
第3部 植民地近代から「転向」現象を再考する(一九三〇年代の封建遺制論争、資本主義論争におけるアジアの影;幕末勤皇歌研究と時局;田辺元『懴悔道としての哲学』における転回・理性批判の射程―ホルクハイマー/アドルノ『啓蒙の弁証法』との比較試論;白先勇『〓子(げっし)』と台北―移ろいゆく都市の記憶)
著者等紹介
緒形康[オガタヤスシ]
東京大学大学院人文科学研究科博士課程。現職、神戸大学大学院人文学研究科教授。専門、中国近代思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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