内容説明
本書では漢字の起源や成り立ちから、甲骨文字、青銅器の銘文、秦漢の小篆や隷書、さらには現代日本人にも縁の深い楷書まで、豊富なエピソードとともに変化と発展の様相をたどり、漢字文化の源流を考察する。
目次
日常生活と漢字
漢字の特徴について
漢字の起源を考える
甲骨文字について
青銅器の銘文について
戦国時代の文字文化
文字を記録するための道具と素材
国家と文字―秦の始皇帝と小篆
紙の発明と普及
漢字の学習と教育―『急就篇』と『千字文』
日本への伝来
印刷のはじまり
中国の字典と辞典
中国の文字改革
現代日本の漢字について
著者等紹介
阿辻哲次[アツジテツジ]
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。1951年大阪府生まれ。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。専門は中国文化史。主として甲骨文字など古代文字学の知見とパソコン・ワープロ等の現代テクノロジーの媒介としての漢字を研究。国語審議会委員として「表外漢字字体表」の作成に従事。文化審議会国語分科会委員として新常用漢字表の作成に参加(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のれん
11
京大の人気講義をまとめたもので、文化論としてかなりスッキリしつつ含蓄ある関西博士の語りが温かい。 素材や筆記方法の進化を通じて、漢字が文化、記録編纂をどう変えてきたを解説。漢字は甲骨文字から拾えば、ヒエログリフあたりから使われている、世界屈指の古代文字でもある。 とにかく文字量が多い中で、木造の活版印刷などは出来ていた当たり視点は大事だな、と感じる。 そんな漢字も今や電子機器で書かせる時代。常用漢字の見直しは必須だ。造語が作りやすく、文化形成をしやすいこの古代文字にはこれからも好きでありたいものだ。2023/02/12
解体工事
11
本書は阿辻氏が京都大学で行う人気講義「中国文字文化論」をまとめたもの。我々の日常生活において欠かすことのできない漢字は、メソポタミアの楔形文字やエジプトのヒエログリフなどと並ぶ、世界最長の歴史をもつ古代文字でもある。中国の甲骨文字を基軸とし、そこから青銅器の金文、そして日本に伝わった。2019/06/27
ののまる
10
京大講義ゼミナールシリーズ。半期15回講義分、ですかね。阿辻先生、志賀島は「博多湾に浮かんで」はいませんよ、陸続きです(というのが、センター試験世界史の引っかけ問題で出たことがあります)。2016/01/04
叡智まん
1
漢字の構成や変化などの文字論を期待していましたが、読んでみると書体や書記方法(刻む、鋳造する、筆する)、素材(甲骨、青銅器、絹、紙)などの変化にまつわるエピソード、辞書の編纂といった歴史コラムの集合でした。タイトルの漢字「文化」というところが主題と思われます。文化大革命以降非公認の簡体字が乱用されたり、近年になって繁体字が高級•正式なイメージとともに復活した話は面白かったです。2022/03/17