出版社内容情報
人類史上それまでにはなかった「全体主義」という枠組から、ナチス・ドイツとソヴィエト・ロシアの同質性と実態を分析した不朽の書。
内容説明
ナチ・ドイツとソヴィエト・ロシアの同質性、プロパガンダ、秘密警察、強制収容所、「見捨てられていること」。先例のない統治形式である全体主義の本質に迫る。
目次
第10章 階級社会の崩壊(大衆;モッブとエリートの一時的同盟)
第11章 全体主義運動(全体主義のプロパガンダ;全体主義組織)
第12章 全体的支配(国家機構;秘密警察の役割;強制収容所)
第13章 イデオロギーとテロル―新しい国家形式
エピローグ (英語版第十三章 イデオロギーとテロル―新しい統治形式)
著者等紹介
アーレント,ハンナ[アーレント,ハンナ] [Arendt,Hannah]
1906‐1975。ドイツのハノーファー近郊リンデンでユダヤ系の家庭に生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。1928年、ヤスパースのもとで「アウグスティヌスの愛の概念」によって学位取得。ナチ政権成立後(1933)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救出活動に従事する。1941年、アメリカに亡命。1951年、市民権取得、その後、バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の教授・客員教授などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
227
世の中はどうやって狂っていくのか。まず階級社会崩壊後の孤立した大衆が無謬の世界像に期待したこと。そこでは予言どころか粛正さえ受け入れられ、人間的な紐帯が密告の対象となった。全体主義の存立条件は殺戮の絶え間ない生産であるらしい。人間を《動物ですらないもの》に貶める強制収容所…それは全体主義の実験場であり、社会理想であったにも拘わらず、全体主義の内部においてすら人間から遮断されていた。誰にも見えない中心を持つ秘密性こそ全体主義の本質なのだ。隠されたものを暴き出す著者の仕事から、今日の学問や芸術の意義を思った。2021/12/19
ベイス
71
人類が編み出した、想像しうる最悪の体制である「全体主義」。なぜここに至ったのか、さまざまな角度から鋭く分析、大変読み応えるのある論説となっている。世界史上、きわめて特殊な、単発局所的な現象なのか?そうではない。今、現在進行形で起こっていることとの「不気味な符合」を感じさせる。彼女の鋭敏な指摘を現代の社会に落とし込み、教訓として生かせるかは私たちにかかえっている。いかに「危うい兆し」を感じとれるか。その芽をつぶしていけるか。アーレントの偉大なる業績を、絶対に無駄にしてはならない。2022/12/30
ケイトKATE
36
第3巻で本題である全体主義の本質に迫っている。アーレントは全体主義国家として、ヒトラーのナチス・ドイツとスターリンのソヴィエト連邦を挙げている。ナチス・ドイツとソ連は一般的に、右翼と左翼の対極の国家とされているが、アーレントはこの二大国家が根本的に同じであることを指摘している。ヒトラーとスターリンという一人の指導者によって権力が掌握されていること。国家が親衛隊(SS)と内務人民委員部(NKVD)という警察組織に監視されていた。ユダヤ人やトロツキストなど、敵を作り上げ容赦ないテロルを行った。(続く)2020/11/22
しゅん
25
「全体主義」の定義が知りたくて3巻だけとりあえず再読。強調されるのは大衆の見捨てられた感なんだな。ヒトラーもスターリンもカリスマ性で勝ったのではないと書かれている。LonelinessとSolitudeの違いはこの本に書かれてたか。前者は見捨てられた状態で、人といても感じるもの。後者は自分と対話できる状態、むしろ必要なもの。『人間の条件』でアーレントが書いた人間の三つの活動の一つ、workはこのsolitudeを要請する。2021/11/17
CCC
17
今までいまいちハンナ・アーレントのすごさが分からなかったけれど、この巻の内容は良かった。1巻序文でこの巻から読むのを推奨されていたのも分かる気がする。シンパと党員の違い辺りの話が興味深かかった。シンパは指導者の言葉を信じる。党員は指導者の考えを「理解」しているのでその嘘を見抜くが、それに欺かれるシンパの様子を見て、指導者が人を手玉に取る能力に長けている事を悟り、さらに指導者への信頼を強める。2018/01/07