内容説明
昔話として全国で語りつがれてきた“浦島太郎”。時代とともに変化し愛されてきた物語を『日本書紀』や太宰治の作品など、各時代の文献から再検証。浦島説話の時代的背景に触れた、一味違った「日本の歴史」を語る。
目次
さまざまな浦島太郎―プロローグ
古代浦島説話の成立と説話の源流
浦島説話の展開と浦島太郎の登場
庶民の浦島太郎―江戸時代の浦島太郎
浦島太郎の近代化
浦島太郎の未来―エピローグ
著者等紹介
三舟隆之[ミフネタカユキ]
1959年、東京都に生まれる。1989年、明治大学大学院博士後期課程単位取得退学。現在、東京医療保健大学医療保健学部准教授、博士(史学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
28
横浜の浦島丘という中学校の名前に、なぜ浦島太郎か関わるのか、丹後との関係など、今までの疑問がこの本で解けた。古代からの浦島説話の変奏を述べながら、日本史上における社会変化との関連を述べていく興味ぶかい論考。本書の著者と似た名前の、三浦佑之氏による「浦島太郎の文学史」という、これまた似た名前の本があるが、こちらは文学・思想を中心軸としている。いずれにしても、歴史の黎明期に現れる浦島伝説が、大陸との深いかかわりとともに、日本的要素との混交によって生まれたことは否定できないだろう。まさに日本最古の物語である。2014/11/06
鴨ミール
24
読み聞かせの材料になるかと読んだ。歴史があるということ、伝わった地方で話が違うことを知った。2019/02/06
オザマチ
16
過去に縁あって著者の講義を受講したことがあり、懐かしく思い返しながら読みました。「俺の講義は役に立たない!」と豪語されていましたが、龍宮城の意匠が日本風でない事や「なぜ玉手箱を開けてしまうのか」といった事柄に一つ一つ突っ込みを入れて、その成り立ちや思想を論じていく興味深い講義でした。もちろん、この本の中身も同様です。厳密には「日本史」の本ではないと思いますが、歴史を学ぶことの面白さを感じることができるようになるかもしれません。2014/12/13
おはなし会 芽ぶっく
13
日本各地で伝承されている浦島伝説。元は日本書紀、浦島子(実在された人物)というから驚き。おじいさんになってしまう話と、鶴になって飛んでいく話と大きく2つに分かれるが、そこに地域性や伝説があることにも驚いた。昔話は歴史的な背景と共に語り繋がれているんですね。2020/06/28
bapaksejahtera
6
直前「浦島太郎の知られざる顔」という書に懲りて本書を借りた。記紀や風土記に由来する古型浦島譚に表れる不老不死を希求する神仙思想とその原型と思われる東アジアの説話を探り、更にはその中に我が国の海外との接点たる沿岸地帯で独自に発達した要素を解く。次いで中世の御伽草子に表れた浦島譚に表れる報恩や尊仏の思想。更に浦島譚の全国周知に伴って各地に生じた浦島の事蹟、近世の浄瑠璃から江戸末期黄表紙の途方も無い浦島パロディーの成立。明治国定教科書によって浦島譚は今日知られるように画一的となった。末尾の定型的侵略戦争論は蛇足2020/10/03