内容説明
哲学者、文化批評家として語られることが多いアドルノには、社会学者という一面も存在する。本書は、社会学という経験が彼の思想にもたらした意味を考える。多様な学を横断したアドルノからは、一味違った「社会」が見えたはずだ。
目次
序章 アドルノという「社会学者」
第1章 アドルノ「客観性」概念の諸位相―出口なき時代と来るべきもの
第2章 「社会学方法論者」としてのアドルノ―「批判」と「実証」の間で
第3章 アドルノの「概念」論と社会学―批判の対象としての概念、批判の媒体としての概念
第4章 断片化された世界へのまなざしと弁証法―ベンヤミンの「救済」、アドルノの「批判」
第5章 アドルノの「伝統」概念―文化的保守主義は、批判理論に接続可能か?
第6章 「批判的社会モデル」としてのアドルノ音楽論―コミュニケーション的実践としての音楽行為
著者等紹介
片上平二郎[カタカミヘイジロウ]
1975年東京生まれ。1998年上智大学理工学部化学科卒業。2002年慶應義塾大学大学院社会学研究科社会学専攻(修士課程)修了。2007年立教大学大学院文学研究科比較文明学専攻(博士後期課程)修了。2010年~2015年立教大学文学部文学科文芸思想専修助教。立教大学、法政大学、明星大学兼任講師。理論社会学(主に批判的社会理論)、現代文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひつまぶし
2
批判理論、および批判社会学とは、どういうことを意味するのか知りたくて読んでみた。根本にあるのは、よく言われるアドルノの非同一性の哲学であることがよく分かった。客観を構成(同一化)するのは主観であるにもかかわらず、その結果として主観ではとらえきれない(非同一化される)客観の存在が見えてくる。「社会」を先件的に扱うところからしか成立しえない社会学は原理的に非同一性に開かれている。そもそも批判を通してしか本領を発揮できないにもかかわらず、しばしばそれを見失って虚栄にまみれるのも社会学というものらしい。2023/05/14