内容説明
個人に基礎をおく憲法体制と民族的宗教的少数集団の権利主張、共和主義と共同体主義、公と私とが鋭く対立する中での国民統合という、今なお解きがたい問題に果敢に挑戦したオスマン立憲政のアクチュアルな試みを跡づけ、近現代の世界史像に修正をせまる力作。
目次
序論 オスマン帝国と立憲政―課題と方法
第1章 組織、制度、思潮
第2章 一九〇八年総選挙から「立憲的改革期」へ
第3章 「特権」と「平等」
第4章 正教会と立憲政
第5章 危機的な一年―一九一二年総選挙からバルカン戦争へ
第6章 バルカン戦争後の変容
結論
著者等紹介
藤波伸嘉[フジナミノブヨシ]
1978年愛知県津島市に生まれる。2001年東京大学教養学部地域文化研究学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。2010年博士(学術)(東京大学)。日本学術振興会特別研究員などを経て、東京大学大学院総合文化研究科特任助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴィクトリー
1
オスマン帝国の第二憲政期の諸派の動きを追った本。この本を読むと多民族多宗教で議会政治を行なう事が如何に難しい事かが分かる。そんな中でもこの時期のオスマン帝国は立憲政における統一性を守ろうとよく努力した方だと思う。結局これが破れたのは第一次バルカン戦争による他国の侵略のせいだった訳だし。が、分離以後の各国史では分離した正当性を述べる必要からオスマン帝国の圧政を言いたて、残されたトルコは分離した地方の裏切りを言いたてるので、当時の統一に向けての努力が見えにくくなっている。本書はそれを明らかにする良書だと思う。2012/02/08