内容説明
新しい「国際語」を創るエスペラント運動を通して反戦平和を訴えた青年教師は、なぜ死ななければならなかったのか。“漢字を制限しローマ字化することで言葉の民主化を推進する”エスペラント運動が日本語抹消論、国際共産主義運動につながるとして山形県特高は徹底的に弾圧した。特高により捏造された斎藤秀一事件の全容と背景を秀一の日記、警察側の資料、関係者の証言などの分析で明らかにする。
目次
プロローグ
第1章 斎藤秀一とエスペラントの出会い
第2章 新しい「国際語」エスペラント語
第3章 治安維持法と特高
第4章 プロレタリア文化運動と斎藤秀一
第5章 特高が捏造した斎藤秀一事件
第6章 郷里山形の小学校教師に
第7章 秀一逮捕
第8章 薬包紙に綴った抵抗の詩
著者等紹介
工藤美知尋[クドウミチヒロ]
1947年山形県長井市生まれ。日本大学法学部卒業、日本大学大学院法学研究科政治学専攻修士課程修了、ウィーン大学留学、東海大学大学院政治学研究科博士課程修了。政治学博士。日本大学専任講師を務めた後、1992年に社会人入試、大学院入試のための本格的な予備校「青山IGC学院」を創立、学院長として現在に至る。日本ウェルネススポーツ大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぽんくまそ
4
聖地出羽三山に近い旧庄内藩・鶴岡市の周辺は昔は秋田県まで差配する出羽国府があったりして、同じ山形県であっても、芋煮さえも内陸の山形市周辺と違い、独自文化の光を保っている。この斎藤秀一(本名ひでかつ 僧名しゅういち)もその中にある。服役中に肺結核に冒され、自宅療養を認められて半年後に32歳で亡くなった。ぼくもエスペランティストなので気になる存在だった。読んでみて、悲劇というより、何か淡々とした読後感がある。世界共通語やローマ字運動に共感しつつ庄内方言の研究をも進めていた知欲の清々しさが成せるわざだろう。2022/03/06