出版社内容情報
モダンスタイルで装飾された銀行家の室内、化粧芬々たる女性達の大夜会…パリ上流社会に「挑戦」する作家の物語。80年ぶりの新訳。モダンスタイルで装飾された銀行家の室内、化粧芬々たる女性たちのあらゆる富を動員した貴族社会の大夜会、伯爵夫人にふりかかる野心家の恋……パリ上流社会に「挑戦」する作家の物語。80年ぶりの新訳。
オノレ・ド・バルザック[オノレドバルザック]
著・文・その他
宇多直久[ウダナオヒサ]
翻訳
内容説明
フランス的エスプリの宝庫。バルザックの「傑作の森」へ。
著者等紹介
宇多直久[ウダナオヒサ]
京都大学経済学部卒業。同文学研究科修士課程修了。パリ第三大学博士課程修了。フランス文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
79
【「女祭り」参加】相当に古い河出書房の全集に収められていた『エーヴの娘』以来の新訳。旧訳は上流階級の女性の話し言葉が蓮っ葉な女郎言葉のように訳されていて辟易したが、新訳は本当に読みやすかった。『谷間の百合』の印象からフェリックスの評価は低いようだが、私はフェリックスが好きなので新訳が出て本当にうれしい。この本で、フェリックスが見直されるといいな。2019/05/22
Susumu Kobayashi
7
訳者がベートーヴェンになぞらえて「傑作の森」の作品の一つと述べる本書は、全集収録の『エーヴの娘』以来83年ぶりの新訳。グランヴィル伯爵には二人の娘マリー=アンジェリックとマリー=ウジェニーがいて、姉はフェリックス・ド・ヴァンドネス伯爵に、妹は銀行家のデュ・ティエに嫁ぐ。姉は芸術家気質のラウール・ナタンに恋をしてしまう。彼女に羨望していた社交界の面々はその行く手を興味深く見守る。『谷間の百合』のフェリックスの変貌に驚く。本来ルビとして処理すべきものがかっこで表示されるなど、校正が雑という残念な印象を受けた。2019/03/28
チャンドラー
2
ヒロインはグランヴィル伯爵の娘アンジェリックとウジェニー。「谷間のゆり」から20年後、フェリックス・ド・ヴァンドネスの結婚生活を描く。彼は貞淑なアンジェリックと結婚し、妻を教育して社交界デビューさせるが、かつて浮き名を流した女たちが彼女を堕落させようする。男たちもまた影で権力と地位を奪い合う。様々な画策が渦巻く中、アンジェリックが劇作家ラウール・ナタンに抱いた恋心、それは皮肉にも唯一夫から与えられなかったものだった。2019/02/26
takeakisky
1
近所の図書館で借り出す。他作からの人物たちが大勢。それはそれで愉しみではあるが、この一篇としての魅力は、なんて思いつつ中盤まで首を捻りつつ読む。それも話が動き出すまで。紡がれる洒落た会話。でも…でも…でも…。愛憎打算奸計が交錯するなか、はっとするほど無垢な老シュミッケ。彼がナタンに似る場合は特に。これでもかと突き刺す。終わってみれば、エーヴの娘たちの優しさ強かさ、そして何より残酷さ。堪能した。読んだ人間喜劇もこれで30本(おそらく)。谷間の百合も読まずばなるまい。いっそ全篇付き合おうという気になってきた。2024/01/13
nightowl
1
ゆったりと人物描写や状況描写の流れを楽しむフローベール、逆に多少せっかち気味に読者の興味を惹きつけるのがモーパッサン。今回バルザック初挑戦だったけれど、明らかに選択を間違えたらしい。300頁に満たない物語の割には人物描写がくどく、後半のお金にまつわるばたばたした展開とのバランスが悪い。上記に挙げた好きな作家二人の中庸はなかなかいないらしい...同じ不倫を題材にしても、先行して読んだ作品に比べると劣る。2019/11/06