内容説明
大人たちは、どのようにして少年たちの性を管理しようとしたのか?大人たちは、少年ひいては男性の性や身体を、どのように見ていたのか?この疑問を解明するため、過去の、教師や医師による発言、学校や軍隊、同窓会関連の書類、受験雑誌、性雑誌を渉猟し、当事者へのインタビューを敢行する。探究をつづけて10年―その成果をまとめたのが、この本である。
目次
序章 課題と方法
第1章 立身出世と性的行為の非両立―一八九〇年代における性的身体の使用禁止言説
第2章 「学生風紀問題」にみる青少年の性の問題化―一八八五~一九一二年の『教育時論』記事を中心に
第3章 「男らしい」人生への誘導―一九一〇~四〇年代の性教育における花柳病言説
第4章 M検と男子学生―一九三〇年代における男子の性の自己管理
結章 まとめと考察―「生産する身体」と「性的身体」がせめぎあう土壌としての男性身体
著者等紹介
澁谷知美[シブヤトモミ]
1972年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了、東京大学博士(教育学)。現在、東京経済大学准教授、ソウル大学奎章閣国際韓国学センター訪問研究員。専門は教育社会学、社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおにし
13
表紙の絵に惹かれて読んでみましたが、605ページの大作であり端折り読みです。男性は「生産する身体」と「性的身体」の二重負担が課せられていて、「性的身体」が「生産する身体」に従属しているがために、仕事を理由に女性への性的暴力が正当化されてきた。しかし、いつまでもこの二重負担は続かず、いつか男性から「生産する身体」を開放される日がくる。というのが結論のようです。また、男性の「性的身体」の中には「脆弱な領域」としてのペニスがあるという指摘は否定できません。EDという恐怖は男性共通のものですからね。2014/05/24
dubstepwasted
2
ハマータウンで描かれなかった、耳穴っ子たちの「男らしさ」とは。 近代学校制度の中では、将来出世した時に使用されるべき性的身体は、学童時代には不断の管理下におかれるだけでなく、「学生時代に、性的目的を果たさずにひたすらに生産目的(出世のための勉学)のために克己することが、将来の性生活と出世の両方を保証する」という言説によって悩まされることとなった。2014/08/25
あきら
1
日本人は性に関しておおっぴらでないくせに氾濫しているよなぁ。とよく思っているのだが、つまり、水商売している人を低く見ているくせに、風俗に行ったこと無いひとはいないとか、テレビや本はこそこそ写したりしているのに年間風俗が打ち出す消費額の多さはハンパない、とか、これを読むと、ああ、なるほどねと思う。穢れたもののように扱い、きちんとした性教育をしてこなかった結果なのですよ。しかもこれだけ証言があるのに「顕在化しなかっただけで無かったわけではない事実」て!!いやほんと、いろんな意味で興味深い本ですわ。2013/10/07
鏡裕之
1
明治初期の学生は、飲む、打つ、買うとかなりワルであった。その状況に呼応して、1890年頃から性的な品行改善が唱えられるようになる。曰く、学生は立身出世に備えて勉学する身だ――。それは1900年頃に不良学生問題と結びつけられ、学生の行動が規制。遊廓ばかりか、寄席や祭からも遠ざけられる。小説も害悪視された。性教育は、オナニーの害や性病の怖さを喧伝して学生を性から遠ざける。M検と呼ばれる性病検査が入試で実行されるようになり、男子学生は自分を性から遠ざけるように管理されていく。児ポ法改正の前に読んでおきたい力作。2013/07/10
てくてく
1
男子学生のある意味伝統であった登楼・男色に対して、徐々に性的身体を用いることが学生の間においては禁止することが望ましいとされ、但しいずれは家庭を持ち性的身体を用いて再生産に参加することが求められるという二律背反について分析した本。M検というのは初耳だった。 2013/05/26