１９世紀を代表する大作家チャールズ・ディケンズというと、「ディヴィッド・コッパーフィールド」などの長編が多く、とっつきにくいというのが多くの人の印象ではないでしょうか。
この本は、ディケンズの人生で起こったさまざまな出来事や社会的背景を紹介しているだけでなく、各作品にまつわるエピソード、それらの作品についての考察などが、イラスト・写真とともに面白く語られています。
私がディケンズ作品の中で個人的に一番好きなのは"Great Expectations"なのですが、この作品について解説している章では、作品の進行順に登場人物やテーマ、用語などが大変分かりやすく説明されており、楽しんで読むことができました。
特に面白いのは、やはり「二つのエンディング」についての解説でしょうか。ご存知の方も多いでしょうが、ディケンズはこの作品のエンディングを二通り書いています。最初に書いたエンディングが友人たちに不評だったため、ハッピーエンドの方に書き換えた、と言われていますが、私は以前から疑問に思っていました。ディケンズほどの構成力を持った大作家が、その円熟期に書いた作品で、エンディングを最初考えていたものから１８０度も変えてしまうなどということがあるのでしょうか？
この本では、その問題についても取り上げ、簡単ではありますが一つの考察を述べています。これをもとに、いろいろと自分で考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
全体を通していえるのは、この本には全く堅苦しさがないということです。難解な表現や専門的な用語は極力減らしてあり、「多くの人が楽しんで読めるように」という配慮が感じられます。
ディケンズを研究したい、という方々にも入門書としてお勧めできます。
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