ラテン語との付き合いは、かれこれ4〜5年になる。少しやっては中断するので、一向に身に付かず、毎度 amo, amas, amat ……を唱えて出直すこととなる。
最近、研究社から野津寛編「ラテン語名句小辞典」が出た。ところどころ、詳細な語句の解説がある優れモノで、そのため2カ月程で通読できた。末尾近くにセネカ出典で「学問・文学のない人生は死である」(vita hominis sine litteris mors est)とあり共感する。
更に、「人生は成程短い、しかし我々は短い人生を与えられたのではなく、自ら浪費することで人生を短くしている」というのもあって、これまた承服せざるを得ない。
そう、私ももう若くはない。ぐずぐずしている時でない。そこで意を決して(!!)書棚に眠っている「ラテン語初歩」を取り出した。岩波の本だから製本はいい。活字も鮮明。
何より本のうすいのがいい。230頁の本だけれど、本文は140ページ程だ
記述はムダなく簡潔そのものだが、要点は尽くされている。ところどころに「〜を参照」(cross-reference)の指示があって学習を振り返るのに有益である。
本文中の活用表も手抜きがなく見やすいうえに、後半部に再度、しっかりした重要活用一覧がまとめられているのがいい。
練習問題は短文中心で少量だから、本文を読み進めるうえでつまずきとはならない。
なかにはいいものがある。たとえば92頁(条件文)。
*「老年は楽しみに満ちている。もしその用い方を君が心得ているならば」セネカ
(Senectus plena est volupitatis, si illa scias uti.)
*「記憶力は弱まる。君がそれを鍛えることがなければ」キケロ「老年について」
(Memoria minuitur, credo, nisi eam exerceas.) そして、
*「もし将来我々が貧しくなるのなら、老年は厭わしいものとなろう」
(Si pauperes erimus, senectus molesta erit.)
この出典は明記されてない。たぶん危うい日本の年金制度を憂慮した著者の作だろうか。
結論。記述は簡潔だからこの本からラテン語学習を始めるには少し骨が折れるだろうが、
すこしかじっては中断、性懲りもなく巷の「入門」本を読みあさるという(私のような)怠け者が、性根をすえて基本知識を整理・確認するためには、最適な書だろう。なにせ人生は短く(セネカ)、年をとるにつれ記憶は衰えるばかり(キケロ)なのだから。

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ラテン語初歩 単行本 – 1990/2/26
田中 利光
(著)
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必要最小限の文法的知識を労少なく記憶し,古典を読む喜びを共有するよう工夫された入門書.手にとり,取りかかれば落伍することなく修得できよう.初めの段階から生きた格言的表現,平易な短文を配した.
- 本の長さ241ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1990/2/26
- ISBN-104000024124
- ISBN-13978-4000024129
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1990/2/26)
- 発売日 : 1990/2/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 241ページ
- ISBN-10 : 4000024124
- ISBN-13 : 978-4000024129
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,041,785位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 35位ラテン語 (本)
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- 2010年12月30日に日本でレビュー済みAmazonで購入
- 2021年10月3日に日本でレビュー済みAmazonで購入ラテン語の文法事項が項目ごとによくまとまっており、各課の末には練習問題等もある。巻末の表や辞書も充実している。ただ、本文中の説明や著者なりの整理の仕方が分かりにくいと感じることもあり、独学用としては必ずしもおすすめではない。
- 2020年11月5日に日本でレビュー済みAmazonで購入例文が多め、じっくり初心者が取り組む内容。
スモールステップで山登り的なテキスト。
「態」で表現するところが「相」なのは、ちょっと古めかしい。
でも、内容は分かり易いからいいか。
- 2018年11月20日に日本でレビュー済みAmazonで購入日本人がラテン語を学習する時に障害になるのは男性、女性、中性のそれぞれの名詞、そしてそれらを修飾する形容詞の格変化を記憶することで、ゲルマン系、ギリシャ系あるいはスラヴ系語学の学習経験がある人なら、その変化形の多様さに圧倒されることはないが、先ずは本書のようにごくシンプルな例を繰り返して慣れ親しんでいくことが重要だろう。文法書を単純にしようとするとどうしても膨大な活用変化の羅列になりがちなので、その点初歩の学習者を考慮したエクササイズは高く評価できる。単に課題に対する解答を掲載するのではなく、練習問題同士でお互いの解答が導き出されるように工夫されているのも重要だ。何故なら分からない時には前のページの文法説明に戻る行為、つまり自身で考えることが不可欠なので、納得しながら学習を進めていくことができるからだ。
ラテン語で主語を省くのが一般的なのは動詞の変化形で主語が判別できるからだが、人称変化は単複6通りを覚えなければならないし、受動態も複合時制を使わないので、たったひとつの動詞の全時制の活用表及び名詞、形容詞の格変化表は何ページにもなってしまう。こうした難関はとりあえず先送りしながら、より単純でストレスのかからない学習をすることの方がむしろ上達への近道だ。もうひとつの問題はラテン語は死語であり、この言語で話していた国家や民族が絶えてしまったことにある。現在ラテン語を公用語として採り入れているのはヴァティカン市国のみで、それはカトリック教会がラテン語訳聖書を使うからで、実際には彼らの共通語はイタリア語になっている。こうしたことからラテン語学習には、常に古典に帰らなければならない宿命があり、本書で古典からの引用や課題が豊富に盛り込まれているのも特長だ。いずれにしても広文典などの立派な文法書は中級に進んでから購入すべきで、辞書もとりあえず巻末の語彙集があるので必要ないだろう。独習の入門者には中山恒夫著ラテン語練習問題集を併読することをお薦めしたい。
- 2016年7月30日に日本でレビュー済みAmazonで購入全くの初心者ですが、分かりやすい説明で非常に勉強が進んでいます。
- 2016年5月19日に日本でレビュー済みAmazonで購入娘の授業のために購入させていただきました。ありがとうございました。