太平洋戦争と名づけられた本は、多くは戦争の経過を
たどる形式が多い。黒羽先生の本など。
本書は時間を追って、戦時の政治、経済のマクロ状況
から法律、思想、国民生活のミクロ状況を克明に分析し
なぜにこの戦争が生じたかを記述する。
とくに第5章「戦争の進展に伴う民主主義の全面的破
壊」の箇所は、現在のわが国の民主主義の制限とパラ
レルな章で、現在の全体主義は戦時下のファシズムの
再現であり、当時の軍機秘密法や国防保安法が、現
在の「秘密防護法」に比肩されることが明確に示さ
れる。
またその頃、陸続と国民のなかに愛国者=小ファシス
トが現れたことが書かれたが、現代の指導者たちも狭
隘な愛国者を育てようとしている。
もちろん戦時下日本は戦後の民主国家に成長し、国民
主権、基本的人権、ジャーナリズムの再建、国民の
貧困からの脱出、封建主義の克服、など、いくつもの
セイフティネットが形作られたが、まだなお、江戸時
代以来の国家への民衆の精神的依存とお上への従順さは
広く残存している。
最近読んだ評論によれば、これは国家性善説から来て
いるとのことである。
指導者たちが、明治憲法への復古を意図する今、本書の
分析は、おおきな示唆を与えるものだと思われる。
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太平洋戦争 第2版 (日本歴史叢書) 単行本 – 1986/11/7
家永 三郎
(著)
- 本の長さ446ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1986/11/7
- ISBN-104000045369
- ISBN-13978-4000045360
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1986/11/7)
- 発売日 : 1986/11/7
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 446ページ
- ISBN-10 : 4000045369
- ISBN-13 : 978-4000045360
- Amazon 売れ筋ランキング: - 439,963位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,858位日本史一般の本
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トップレビュー
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2013年12月22日に日本でレビュー済み
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2015年3月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
戦後の日本を考えていくとき、戦前の日本がどうであったかをぬきに正確な理解はできない。戦後70年たち、これからの日本の国際社会でのあり方、近隣諸国と良好な関係をきずくために大事な資料となる。戦後の国際社会の復帰が、日本はドイツのように過去を反省して謝罪し行いによって復帰を認められたような体験なしにアメリカの世界戦略の陰でかくれて復帰しました。しっかりと活用したいと思います。
2019年1月6日に日本でレビュー済み
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戦争体験者としての良心に基づく歴史記述であろうと思います。
2019年6月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
学生時代,インパール作戦でお父さんを亡くされた先生が担当された「政治学」のテキストでした。
最近,世相が右傾化していることもあり,改めて手に入れ読み返してみました。当時の世相を反映して扇情的な表現もありますが,よく調べてあります。国民が飢えているときに軍司令部に豊富に食料があったことは橋田壽賀子さんなどもエッセイに書かれていますから,誇大表現はあっても内容は大筋であっていると思います。
大事な事は,根本は教育勅語に基づく皇国教育が惨禍の原因ということだと思います。いいことも悪いこともルーツはずっと前に遡ります。ちょっとこれぐらいといいやと見過ごしていると,取り返しがつかないところまで流されてしまうかもしれません。若い世代の人達にも読み継いでいって欲しい本です
最近,世相が右傾化していることもあり,改めて手に入れ読み返してみました。当時の世相を反映して扇情的な表現もありますが,よく調べてあります。国民が飢えているときに軍司令部に豊富に食料があったことは橋田壽賀子さんなどもエッセイに書かれていますから,誇大表現はあっても内容は大筋であっていると思います。
大事な事は,根本は教育勅語に基づく皇国教育が惨禍の原因ということだと思います。いいことも悪いこともルーツはずっと前に遡ります。ちょっとこれぐらいといいやと見過ごしていると,取り返しがつかないところまで流されてしまうかもしれません。若い世代の人達にも読み継いでいって欲しい本です
2015年8月9日に日本でレビュー済み
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太平洋戦争のことを知るうえで重要な本の一つです。
手元に置いて、いつでも読めるよう購入しました。
いきなりどのページを開いて読んでも、この戦争の実態が
具体的に、克明に分かります。
手元に置いて、いつでも読めるよう購入しました。
いきなりどのページを開いて読んでも、この戦争の実態が
具体的に、克明に分かります。
2011年12月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
膨大な資料をもとに著された家永氏の労作です。満州事変から敗戦にいたる昭和史を学ぶ者にとっては必読の書といえるでしょう。特に、ノモンハン事件についての明解な批判、ファシズム時代にあっての諸外国民衆の抵抗運動、戦時下日本における一部ではあるにせよ兵士・国民による反戦行動に関しての記述は大変参考になりました。より冷徹な分析、批評を期待していた部分もありましたが、家永氏の心情・立場を考慮するとき、それは高望みだったと分かります。いずれにせよ、批判をおそれずにこの「太平洋戦争」を書かれた氏の態度は誠に立派で、永く読み継がれるべき名著といえましょう。
2014年5月9日に日本でレビュー済み
「南京事件」について、自分の頭を整理するため読んだ、5冊の本(※)。
その2冊目である本書は、中心テーマは南京事件ではなく、その題名のとおり、「太平洋戦争」です。
しかし、1980年代の若き頃読んだもので、大変に印象深く、「南京事件」も、満州事変に始まる太平洋戦争の一環として、触れているので、このたび、再読してみました。
「太平洋戦争の歴史は、日本の歴史上に前例のない汚辱の歴史」と位置付ける著者は、太平洋戦争を、1931年の満州事変を起点とする、15年戦争として、ひとつの流れの中で、本書を綴っていきます。
そこには、第一編が「戦争はどうして阻止できなかったか」という投げかけで示されるとおり、「太平洋戦争は、当時の情勢から避けられなかった」という言い逃れを厳に戒める論調で書き進められていきます。
結論的には、軍国主義という一種のファシズム国家に日本が変容し、誤った方向へ突き進んだことが、日中戦争を引き起こし、さらには、日米開戦という事態にまで発展し、民間人を含む、300万人とも言われる犠牲を生み出すという悲劇にまでなったと述べています。
このような論調を聞くと、最近よく耳にする「自虐史観」ではないか、と思われる方もいるかもしれませんが、決してそのようなことはなく、太平洋戦争を抑止するところまではいかなかったけれども、戦争に反対し、行動した日本人がいたこと、また、日本だけが残虐行為に走ったのではなく、アメリカによる原子爆弾の投下も、道徳的に許しがたい残虐行為であったと断罪しています。
このようなことから、発表年は1968年と、ちょっと古いけれども、「反戦」というごく当たり前のことを、丁寧に論説した書物として、現在でも読む価値は失われていないと思います。
私が読んだのは、単行本の本書ですが、同じものが文庫版( 太平洋戦争 (岩波現代文庫―学術) )でも簡単に入手できますので、「戦争を知る世代」からの重要なメッセージとしてオススメします。
【南京事件について】
さて、そんな中で、今回の読書の大きな目的である「南京事件」とは何か、ですが、記述されているのは2ページほどで、あまり多くはありません。
著者は、その原因として、当時の軍国主義の中に、反民主主義的な要素が内在しており、その発現として、残虐行為につながったとしています。
その論調には、異存はありませんが、次の描写はちょっと行き過ぎではないか、と感じています。
曰く、「女は片はしから強姦され、商店と家屋は軒なみに略奪され、放火された」
この記述だと、軍の命令直下、婦女子に対してはすべて強姦し、無差別に略奪、放火を行ったように受け取れてしまいます。
しかし、私が他の4冊を読んだ限りでは、そこまで日本軍は、無秩序ではなかったように思います。
南京城内には、安全区が設定されており、そこに「難民」の認定を受けて、留まっている市民に対しては、何ら手出しはしていないのではないでしょうか。(注)
(注)この記述については、追加の2冊を読了し、安全区内の敗残兵の掃討が記述されていたことから、安全区内の市民も巻き添えをくらった可能性がある、という認識に改め、訂正させていただきます。(2015年6月20日追記)
(※)この経緯については、コメント欄に記載しました。
その2冊目である本書は、中心テーマは南京事件ではなく、その題名のとおり、「太平洋戦争」です。
しかし、1980年代の若き頃読んだもので、大変に印象深く、「南京事件」も、満州事変に始まる太平洋戦争の一環として、触れているので、このたび、再読してみました。
「太平洋戦争の歴史は、日本の歴史上に前例のない汚辱の歴史」と位置付ける著者は、太平洋戦争を、1931年の満州事変を起点とする、15年戦争として、ひとつの流れの中で、本書を綴っていきます。
そこには、第一編が「戦争はどうして阻止できなかったか」という投げかけで示されるとおり、「太平洋戦争は、当時の情勢から避けられなかった」という言い逃れを厳に戒める論調で書き進められていきます。
結論的には、軍国主義という一種のファシズム国家に日本が変容し、誤った方向へ突き進んだことが、日中戦争を引き起こし、さらには、日米開戦という事態にまで発展し、民間人を含む、300万人とも言われる犠牲を生み出すという悲劇にまでなったと述べています。
このような論調を聞くと、最近よく耳にする「自虐史観」ではないか、と思われる方もいるかもしれませんが、決してそのようなことはなく、太平洋戦争を抑止するところまではいかなかったけれども、戦争に反対し、行動した日本人がいたこと、また、日本だけが残虐行為に走ったのではなく、アメリカによる原子爆弾の投下も、道徳的に許しがたい残虐行為であったと断罪しています。
このようなことから、発表年は1968年と、ちょっと古いけれども、「反戦」というごく当たり前のことを、丁寧に論説した書物として、現在でも読む価値は失われていないと思います。
私が読んだのは、単行本の本書ですが、同じものが文庫版( 太平洋戦争 (岩波現代文庫―学術) )でも簡単に入手できますので、「戦争を知る世代」からの重要なメッセージとしてオススメします。
【南京事件について】
さて、そんな中で、今回の読書の大きな目的である「南京事件」とは何か、ですが、記述されているのは2ページほどで、あまり多くはありません。
著者は、その原因として、当時の軍国主義の中に、反民主主義的な要素が内在しており、その発現として、残虐行為につながったとしています。
その論調には、異存はありませんが、次の描写はちょっと行き過ぎではないか、と感じています。
曰く、「女は片はしから強姦され、商店と家屋は軒なみに略奪され、放火された」
この記述だと、軍の命令直下、婦女子に対してはすべて強姦し、無差別に略奪、放火を行ったように受け取れてしまいます。
しかし、私が他の4冊を読んだ限りでは、そこまで日本軍は、無秩序ではなかったように思います。
南京城内には、安全区が設定されており、そこに「難民」の認定を受けて、留まっている市民に対しては、何ら手出しはしていないのではないでしょうか。(注)
(注)この記述については、追加の2冊を読了し、安全区内の敗残兵の掃討が記述されていたことから、安全区内の市民も巻き添えをくらった可能性がある、という認識に改め、訂正させていただきます。(2015年6月20日追記)
(※)この経緯については、コメント欄に記載しました。
2005年2月8日に日本でレビュー済み
本当にこの戦争を知らない世代だけの時代が迫りつつあるこれからこそ,本書を読み続けたい。
「科学的な」共産主義へのシンパシーを差し引いてもなお,本書は,ひとりひとりが経験するものとして戦争を,まざまざと,語っている。
相当にエピソディックな語り口で,あらゆる原因が精神論であるかのような記述だから,戦争がなぜおきたのか,実際何があったのか,といった理解は得られないが,もっと根本的な,読者である私自身にとって戦争とは何なのか,どうなのか,さらには何しに生きとんのか,そんなこんなを激しく再考させる。
裁判報道の印象からかサヨでアナキストで,といった印象の著者だったが,その文体からは,深い深い愛国の念と,そして何より,われわれ次代の一人一人への激情的ともいえるほどの愛情とが,ほとばしっていた。意外だった。
今は亡き著者のそんな想いと,過去のあまりのバカらしさに,涙せずには読めない一冊でした。
「科学的な」共産主義へのシンパシーを差し引いてもなお,本書は,ひとりひとりが経験するものとして戦争を,まざまざと,語っている。
相当にエピソディックな語り口で,あらゆる原因が精神論であるかのような記述だから,戦争がなぜおきたのか,実際何があったのか,といった理解は得られないが,もっと根本的な,読者である私自身にとって戦争とは何なのか,どうなのか,さらには何しに生きとんのか,そんなこんなを激しく再考させる。
裁判報道の印象からかサヨでアナキストで,といった印象の著者だったが,その文体からは,深い深い愛国の念と,そして何より,われわれ次代の一人一人への激情的ともいえるほどの愛情とが,ほとばしっていた。意外だった。
今は亡き著者のそんな想いと,過去のあまりのバカらしさに,涙せずには読めない一冊でした。