「確率論」を著した若き時から、「一般理論」を著す時までの、ケインズの社会観、科学的方法論等の変遷等を追った名著。
晩年には後期のヴィトゲンシュタインの社会観ともビジョンを共有していたという指摘は大変興味深い。
ケインズ思想がいまでも魅力を保ち続ける理由がここにあると思われる。
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ケインズの哲学 単行本 – 1999/6/28
伊藤 邦武
(著)
哲学上の大きな転回の予感につつまれた1930年代ケンブリッジ-ウィトゲンシュタイン,ラムジーと共にケインズが担ったこの精神圏から,精神科学としての経済学は誕生した.『確率論』から『一般理論』に至るケインズの軌跡に,認識論的転換の意味を探り,現実世界の生きた理解のための思考の科学を考案した,一人の哲学者の肖像を浮彫りにする.
- 本の長さ242ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1999/6/28
- ISBN-104000227033
- ISBN-13978-4000227032
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商品の説明
メディア掲載レビューほか
20世紀を代表する経済学者ケインズ。彼の哲学者としての側面に光を当てた異色の書
20世紀を代表する経済学者のケインズ。彼には外交官,芸術活動のパトロン,会社経営者などの顔があった。本書は,その中で哲学者としてのケインズに焦点を当てた。経済学の大家へと変貌する過程には,純然たる「分析哲学」の徒であったケインズの哲学上の問題意識が深く投影されていた。分析哲学の発展に重要な役割を果たした,若き日の著作『確率論』を考察の中心におき,そこから経済大家としての代表作である『一般理論』の意味を考えてみようという野心的な書である。しかし,本書の別の醍醐味は,英国ケンブリッジにおいてウィトゲンシュタイン,ムーア,ラッセルら分析哲学の友人らとの交流を描いた記述である。その相互の触発と葛藤のドラマの中でケインズの哲学的な思考基盤は固まっていく。それゆえにこそ,『確率論』にはムーア,ラッセルという偉大な哲学者たちの思想を総合して,一つの包括的な認識論,科学論を完成しようという意図が込められていた,と著者は描く。ケインズの思想的背景,経済学の大家のバックボーンがどこにあったかを描く異色の書である。 (ブックレビュー社)
(Copyright©2000 ブックレビュー社.All rights reserved.)
-- ブックレビュー社
20世紀を代表する経済学者のケインズ。彼には外交官,芸術活動のパトロン,会社経営者などの顔があった。本書は,その中で哲学者としてのケインズに焦点を当てた。経済学の大家へと変貌する過程には,純然たる「分析哲学」の徒であったケインズの哲学上の問題意識が深く投影されていた。分析哲学の発展に重要な役割を果たした,若き日の著作『確率論』を考察の中心におき,そこから経済大家としての代表作である『一般理論』の意味を考えてみようという野心的な書である。しかし,本書の別の醍醐味は,英国ケンブリッジにおいてウィトゲンシュタイン,ムーア,ラッセルら分析哲学の友人らとの交流を描いた記述である。その相互の触発と葛藤のドラマの中でケインズの哲学的な思考基盤は固まっていく。それゆえにこそ,『確率論』にはムーア,ラッセルという偉大な哲学者たちの思想を総合して,一つの包括的な認識論,科学論を完成しようという意図が込められていた,と著者は描く。ケインズの思想的背景,経済学の大家のバックボーンがどこにあったかを描く異色の書である。 (ブックレビュー社)
(Copyright©2000 ブックレビュー社.All rights reserved.)
-- ブックレビュー社
内容(「MARC」データベースより)
20世紀思想のラディカルな転回点の予感につつまれた、1930年代ケンブリッジ。論理学研究の記念碑的事業「確率論」の成立から、精神科学としての経済学の提唱に至るまでの、ケインズの生き生きとした思考の軌跡を辿る。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1999/6/28)
- 発売日 : 1999/6/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 242ページ
- ISBN-10 : 4000227033
- ISBN-13 : 978-4000227032
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,047,585位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 93,106位ビジネス・経済 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1949(昭和24)年、神奈川県に生まれる。京都大学大学院博士課程修了。85年『パースのプラグマティズム』により文学博士。91年同大学文学部助教授。95年同大学大学院文学研究科教授(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『物語 哲学の歴史 - 自分と世界を考えるために (ISBN-10: 4121021878)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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2020年3月21日に日本でレビュー済み
2014年10月14日に日本でレビュー済み
この世界は、風が吹けば桶屋が儲かるという世界ではない。学者として自己を立脚したケインズの哲学を、学問領域の哲学の手法に則して、取り上げたと言うことは可能だろう。
ただし、それはあくまで可能性の一つに過ぎず、現実性を強力に特徴づけたり、普遍性を具えたりするものではない。例えば、極限状況でも通用する強さと多重量化を経てもなお変わらない非自明性に対する探究心が要求された時代のケインズの判断を率なく描写することも、たった三語で可能となる。これが哲学の世界である。
時代背景を考慮すれば、哲学的には、クワインの研究成果を念頭に置く必要がある。経済学者と倫理的な主題ということであれば、ミルを始めとする議論を描写すれば良い。言い換えれば、その特徴ないし関心と研究テーマの整合性が低い。
その倫理的かつ行動主義的な努力を俎上に載せたとするならば、ミルの帰着点ないしベンサムの源流との関係性に焦点を合わせる努力が求められるように思う。倫理学の基礎と美学の基礎を天秤にかけたようなところがあるものの、全体として迫力に欠ける。内容を考慮すれば、美学に見られるような図式の明晰さが欲しい。
ただし、それはあくまで可能性の一つに過ぎず、現実性を強力に特徴づけたり、普遍性を具えたりするものではない。例えば、極限状況でも通用する強さと多重量化を経てもなお変わらない非自明性に対する探究心が要求された時代のケインズの判断を率なく描写することも、たった三語で可能となる。これが哲学の世界である。
時代背景を考慮すれば、哲学的には、クワインの研究成果を念頭に置く必要がある。経済学者と倫理的な主題ということであれば、ミルを始めとする議論を描写すれば良い。言い換えれば、その特徴ないし関心と研究テーマの整合性が低い。
その倫理的かつ行動主義的な努力を俎上に載せたとするならば、ミルの帰着点ないしベンサムの源流との関係性に焦点を合わせる努力が求められるように思う。倫理学の基礎と美学の基礎を天秤にかけたようなところがあるものの、全体として迫力に欠ける。内容を考慮すれば、美学に見られるような図式の明晰さが欲しい。