福島の放射能汚染は、未曾有の規模の原発被災者と避難者を生んだ。
政府は、20ｍＳｖ/ｙという高い放射能許容基準を設けて、地元自治体の復興と被災者の隠ぺいを目指している。
地元復興の一環として、新たな原発産業の町を作って失われた1万人の雇用を生み出そうとしている。しかし、ここへ入る人材は元の地元民ではない（ｐ.178）。
福島の現状は、水俣病に相対した町の社会経過と瓜二つである。
まず被災者の隠ぺいに走り、水俣病に苦しむ人々を企業城下町の地域社会に対する反逆者として口封じをし、泣き寝入りを強要した。
汚染土壌の水域を少し汚染度に低い海底土で埋めて、観光レクレーション施設を作ろうとした。そこには、水俣病の隠ぺいの目論見ばかりが見え透いていた。
本来の地元の人々の暮らしは土や海と共生する生活であった。その暮らしを取り戻し、地域社会を再建することが望ましい姿であって、外来工業の失敗を外来工業（あるいは人工観光施設）で取り戻すという、官庁やコンサルタントの促成施策（とゼネコン投入）は、長続きしない（ｐ.183）。
被災者を懐に守りつつ、罪を背負って共に生きる社会の忍耐が必要であることを示している。
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