著者の中村靖彦さんは農政ジャーナリストです.カバーには「TPP問題に揺れる日本の現状を憂慮し,その問題を解決するための提言」とあります.本書を通読し,著者の提言を知った今,私は彼の提示するような農政改革をすべきだと痛感しました.この改革が実行し,成功すれば,仮にTPPに参入しても少なくとも農家は護られるでしょう.しかし,TPPは農家だけの問題ではありません.医療やら健康やら保険やら国民生活に広く関わりますから,私はTPPを敬遠した方が利巧だと思っています.TPPは財政破綻したアメリカ経済の再建が目的です.これに乗じて少数のアメリカ富裕層が更に富を蓄積しようとする悪だくみです.アメリカによる略奪です.堤未果さんの
ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
を読めば分かります.それはさておき,荒廃しつつある日本の農業は立て直す必要があります.著者の提言する三つの柱は参考になりますので,紹介します.
第一の柱「国としての穀物戦略を樹立し,展望なき主食用米の生産調整から脱却する」(144頁):5年後を目標に,延べ作付面積500万ヘクタール,耕地110%をめざし,品目・用途ごとの穀物について総合戦略を定める.国土の狭い日本では有効な生産の仕方を考える必要がある.
第二の柱「農業経営総合支援制度」(146頁):全ての持続する農業経営体を対象に,農地・人・技術・経営・ノウハウなどを自由に活用できるよう,多面的に支援する.
第三の柱「財政負担型の所得施策に軸足を移す農政改革の断行」(147頁):消費者が農家から買うのでなく,財政から支出してまとめて支払うというヨーロッパでよく見られる農業者支援を行う.日本でも同じように改革すべきだと著者たちは考えています.
農政を効率よくしたい著者たちの姿勢は評価できます.しかし,今やTPPが浮上してきて,これを機に攻めの農政(154頁)を実行しようとするなら賛成できません.農政改革はTPPと無関係に存在する重要案件ではないでしょうか.ところで,韓国はFTA発効まもなく2年になります.その後の詳しい経過を知りたいものです.
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TPPと食料安保――韓米FTAから考える 単行本(ソフトカバー) – 2014/1/31
中村 靖彦
(著)
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TPPを米国とのFTAと考える著者は、最近韓米FTAが発効した韓国の動向が、今後の日本の食料安保問題等の参考になるのではという視点から、現地取材を行い、その実態を報告する。関税撤廃に動揺しながら、農業の新たな可能性が探られる一方で、ISD条項、知的財産権、自由診療制度など懸念される問題を明らかにする。
- 本の長さ160ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2014/1/31
- 寸法13.5 x 1.5 x 19.5 cm
- ISBN-104000240439
- ISBN-13978-4000240437
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2014/1/31)
- 発売日 : 2014/1/31
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 160ページ
- ISBN-10 : 4000240439
- ISBN-13 : 978-4000240437
- 寸法 : 13.5 x 1.5 x 19.5 cm
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年2月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年2月14日に日本でレビュー済み
米韓FTA後の、韓国の様子を知りたくて購入。池上彰さんが、いち早く開放路線をとった韓国政府を英断だと、それにくらべて日本は優柔不断だ、とどこか(?)に書かれていて、そうなの?と、TPPでは日本が困るというのを真に受けていたので、そこのところが冷静にみられるか、と期待しました。
しかし、現地レポート範囲が狭く、時期的にも関税撤廃も未だの時期だったので、期待していたより参考にならないように思いました。
ただ、今後必ず農家にとって着々と厳しい状況になっていくだろうという、農業関係者には大変不条理で重苦しい雰囲気があるようすが感じられました。
サムスンの副社長が農村支援を行っていることが、明るい材料として書かれていますが、条約ルールが今後容赦なくしめつけを強化することが決まっているなか、元気さや華やかなカリスマ性、「氷が溶ければ春が来る」というような口先の発想の転換や、足すのではなく掛けるなどどいう意味不明の抽象論では、解決は難しいのではと、思います。
韓国が、まず開放ありき、で、あとから やっちまったなー、とならなければいいのですけど。。。
その不満の八つ当たりや犠牲となった人たちに対する政府の意識そらしが、日本バッシングとなって、
それがまた日本へTPP交渉の圧力にならなければいいのですけど。。。
(最近、慰安婦像をアメリカ各地に作るとか、日本海を東海とするとか、なーんか、アメリカ内で韓国がヤな感じーー;にクローズアップされてる気がするのよねー)
情報を収集し冷静にみて、浮かれず激さず、賢明であること、粘り強さが、まず条約交渉時に必要なことではないかと思いました。
農業についてだけではなく、牛肉、ローンスター、医療の営利化、医薬品の知的所有権、遺伝子組み換え作物、BSE、食品添加物、についての、FTAの影響も書かれていますが、あまり深くないです、ネットや既書での情報以上には感じられませんでした。
筆者の主張にはほぼ共感します。
しかし、現地レポート範囲が狭く、時期的にも関税撤廃も未だの時期だったので、期待していたより参考にならないように思いました。
ただ、今後必ず農家にとって着々と厳しい状況になっていくだろうという、農業関係者には大変不条理で重苦しい雰囲気があるようすが感じられました。
サムスンの副社長が農村支援を行っていることが、明るい材料として書かれていますが、条約ルールが今後容赦なくしめつけを強化することが決まっているなか、元気さや華やかなカリスマ性、「氷が溶ければ春が来る」というような口先の発想の転換や、足すのではなく掛けるなどどいう意味不明の抽象論では、解決は難しいのではと、思います。
韓国が、まず開放ありき、で、あとから やっちまったなー、とならなければいいのですけど。。。
その不満の八つ当たりや犠牲となった人たちに対する政府の意識そらしが、日本バッシングとなって、
それがまた日本へTPP交渉の圧力にならなければいいのですけど。。。
(最近、慰安婦像をアメリカ各地に作るとか、日本海を東海とするとか、なーんか、アメリカ内で韓国がヤな感じーー;にクローズアップされてる気がするのよねー)
情報を収集し冷静にみて、浮かれず激さず、賢明であること、粘り強さが、まず条約交渉時に必要なことではないかと思いました。
農業についてだけではなく、牛肉、ローンスター、医療の営利化、医薬品の知的所有権、遺伝子組み換え作物、BSE、食品添加物、についての、FTAの影響も書かれていますが、あまり深くないです、ネットや既書での情報以上には感じられませんでした。
筆者の主張にはほぼ共感します。
2014年3月20日に日本でレビュー済み
著者は、NHKの元解説委員で、農業・食糧問題が専門とのことである。本書は、韓米FTA発効後の韓国の現状調査を踏まえた、TPPが農業・食料問題に及ぼす影響の考察である。TPPに参加するかどうかは別としても、食料のTPP問題は、結局、農業改革問題に帰着する。韓国でも必死の取組みが始まっているが、翻って日本の農業改革の遅れに警鐘を鳴らしている、というのが本書のスタンスである。
著者は、まずTPP参加検討に当たり、食料関係の重要品目を「聖域」としているが、政府やマスコミにその内容を精査し、妥当性を検討していないことが不毛な論争を招いていると指摘する。「聖域」が品目数であまりに多く(約10%)、これでは最初から交渉にならない(「聖域」として「死守」出来るはずがない)という訳である。また、TPPは実質的に日米FTAではないか、という問題意識から、韓国の実情を調査するに至った。
零細農家が多いこと、農業者が高齢化していること、農地の所有に厳しい制限があることなどで、日韓の農業問題には共通点が多い。2回の現地調査の結果明らかになったことは、韓国の農業者に元気がないこと、関税低下で打撃を受ける畜産業に悲観論が多いことである。財閥系シンクタンクで、10年間農村を具に訪ね、農業者と交流しながら改革の道を模索している研究者とのインタビューが興味深い。同氏は、韓国農業を駄目にする10か条として次のように述べている。
(1)政府の支援や補助金ばかり期待する。(2)過去の成功例にしがみついている。(3)いいものを作りさえすれば売れると錯覚する。(4)努力もせずに金儲けだけを追求する。(5)人的なネットワークを作らない。(6)長期計画よりも目前の利益を追う。(7)周囲の環境変化に鈍感である。(8)他人がすることに無条件で追従する。(9)自分が一番優れていると自惚れる。(10)手っ取り早く稼いで農業をやめようとする。
これらはそのまま日本への警告にもなっている。この他、韓国における官民共同のビッグプロジェクト(食品産業クラスター、ハブ空港、最先端の大規模港湾等)の報告もある。
本書への不満を述べれば、韓国と同時に、日本の農業者への実地調査やその分析がなぜ含まれないのだろうか。日本各地でも、TPP参加への賛否はともかく、官に頼らずに必死で改革を行ない、成果を出している事例も多いはずである。これら日本の事例を韓国の実情と比較することで、これからの農業のあるべき姿がより鮮明になるのではないだろうか。
著者は、まずTPP参加検討に当たり、食料関係の重要品目を「聖域」としているが、政府やマスコミにその内容を精査し、妥当性を検討していないことが不毛な論争を招いていると指摘する。「聖域」が品目数であまりに多く(約10%)、これでは最初から交渉にならない(「聖域」として「死守」出来るはずがない)という訳である。また、TPPは実質的に日米FTAではないか、という問題意識から、韓国の実情を調査するに至った。
零細農家が多いこと、農業者が高齢化していること、農地の所有に厳しい制限があることなどで、日韓の農業問題には共通点が多い。2回の現地調査の結果明らかになったことは、韓国の農業者に元気がないこと、関税低下で打撃を受ける畜産業に悲観論が多いことである。財閥系シンクタンクで、10年間農村を具に訪ね、農業者と交流しながら改革の道を模索している研究者とのインタビューが興味深い。同氏は、韓国農業を駄目にする10か条として次のように述べている。
(1)政府の支援や補助金ばかり期待する。(2)過去の成功例にしがみついている。(3)いいものを作りさえすれば売れると錯覚する。(4)努力もせずに金儲けだけを追求する。(5)人的なネットワークを作らない。(6)長期計画よりも目前の利益を追う。(7)周囲の環境変化に鈍感である。(8)他人がすることに無条件で追従する。(9)自分が一番優れていると自惚れる。(10)手っ取り早く稼いで農業をやめようとする。
これらはそのまま日本への警告にもなっている。この他、韓国における官民共同のビッグプロジェクト(食品産業クラスター、ハブ空港、最先端の大規模港湾等)の報告もある。
本書への不満を述べれば、韓国と同時に、日本の農業者への実地調査やその分析がなぜ含まれないのだろうか。日本各地でも、TPP参加への賛否はともかく、官に頼らずに必死で改革を行ない、成果を出している事例も多いはずである。これら日本の事例を韓国の実情と比較することで、これからの農業のあるべき姿がより鮮明になるのではないだろうか。