〇 鴎外を直接知る家族、友人、文士仲間などの回想記を55篇集めたもの。こうなると内容は様々で、心のこもった佳作もあれば、義理で書いたような文章もある。わたしは特に内田魯庵、井伏鱒二、斎藤茂吉などうんと若い文士の後輩や、役所の部下であった人たちなどの文章がしみじみとしていて良いと思った。おおざっぱな感じで言えば、とても良いと思った文章は全体の3割から4割くらい。打率3割台は野球の打率ならば素晴らしいのだが、この種の文集ではどうなのだろう?ちょっと物足りない気がする。
〇 様々な人によって描かれる鴎外像は、ほぼ一致している。謹厳で取っつきにくい人だと思われているが、実は若い者にも親切でたいそう親しみやすい人だった。とりわけ子供たちに深い愛情を注いだ。食べ物には執着せず粗食を好んだ。書物に対する愛着は並々ならぬものがあり、和洋を問わずまた通俗書なども目を通していた。大変な勉強家で毎日3,4時間しか寝ていなかった。病気の時でも医者や薬を寄せ付けず、しかも役所には時間通りに出かけた、存命時から文化的巨人として多くの人の尊敬を集めていた、等々である。鴎外ファンとしてはお爺さんの昔の話を改めて聞くようなもので何となくうれしくなる。
〇 ただしこれまで知られていない事実が明かされるということはあまり無いし(少しはある。鴎外が漱石の葬儀に参列したことはわたしは初めて知った)、新しい視点にハッとしたということもあまりない。すでにどこかに発表された文章を集めているのだから、これは当然か。
〇 本の作りは行き届いている。追悼文の配列は良いと思うし、巻末に付けられた執筆者の簡単な略歴、鴎外の生涯、年譜は便利だ。活字も行間もゆっくりしていて、老眼でも苦にならずに快適に読める。
〇 以上を要するに、この本の価値はあちらこちらに散らばっている鴎外について書かれた追悼文を一冊にまとめたところにある。このメリットは大きい。鴎外ファンにとっては大変にありがたいことだ。しかし、その内容は打率3割台で、驚くようなことは書かれていないとすれば、編集が行き届いていることを加味しても、4星かなと思った。
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鷗外追想 (岩波文庫 緑201-4) 文庫 – 2022/5/13
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近代日本の傑出した文学者で、西洋文化全般を日本に伝えた先導者、さらに軍医総監・政府高官でもあった森鷗外。その風貌に接した友人、後続の文学者、親族、軍人ら、同時代人の回想五十数篇から、厳しさと共に細やかな愛情を持った巨人のさまざまな素顔が現れる。鷗外文学への格好の道標となる一冊。
- 本の長さ488ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2022/5/13
- 寸法2 x 10.5 x 14.8 cm
- ISBN-104003120140
- ISBN-13978-4003120149
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2022/5/13)
- 発売日 : 2022/5/13
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 488ページ
- ISBN-10 : 4003120140
- ISBN-13 : 978-4003120149
- 寸法 : 2 x 10.5 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 375,713位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,456位岩波文庫
- - 6,493位近現代日本のエッセー・随筆
- - 68,751位ノンフィクション (本)
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2022年5月19日に日本でレビュー済み
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2022年10月10日に日本でレビュー済み
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明治、大正の知ってる、知らない多くの文人の追悼から、知ることが面白くいっぱいあった。
2023年5月14日に日本でレビュー済み
平成の中頃から文庫での改訳や再発、さまざまな括りでのアンソロジーが充実してきて、その分価格も上がりましたが、国内外問わず新作がそこはかとなくライトノベル化といいますか、行儀が良いといいますか、曰く言い難い違和感を覚えていたので、半世紀近く前に読んだ、知ってはいたけれど読んでいなかった作品であったりに出会える僥倖に浴する機会に恵まれた今日この頃です。
坪内逍遥などは失礼ながら評伝をおもしろおかしく読んだ記憶はあるものの、その作品となると、大昔に苦しみながらの「当世書生気質」の読了という体たらくであるので、他の作家も含めてこういった文章はとても新鮮でした。
坪内逍遥などは失礼ながら評伝をおもしろおかしく読んだ記憶はあるものの、その作品となると、大昔に苦しみながらの「当世書生気質」の読了という体たらくであるので、他の作家も含めてこういった文章はとても新鮮でした。
2022年7月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
巨人と言うに相応しい森鴎外の日常が様々の人の眼を通して語られる。
軍医、研究者、文学者、やはりこの人は日本の歴史に残る尊敬される人でした。
軍医、研究者、文学者、やはりこの人は日本の歴史に残る尊敬される人でした。