今の鬱々とした状態を打ち破るのに最適な本であった。その理由を他者のせいだと思いかけていた弱い気持ちを、「そうではないぞ、」と戒められた気がする。
そのことはこの本の中にも書いてある。即ち、幸田露伴は、自己を新たにする(自分を啓発する)には二つの方法がある、「自己によって自己を新たにするか、他によって自己を新たにするか」である。この他によって自己を新たにする、とは、良き師や先輩、或は上司について学ぶ事なのだと言う。解説者の中野孝次氏は、そういう人間関係が希薄になった今、読書がそれに当たるのではないか、と看破している。まさに、私はこの本から、「愚劣なこと、好からぬことが起こっても、その原因を全て自分一個の責に帰する。−中略− 他人を咎めず、運命を咎めたり怨んだりしない。−中略− 並大抵でない苦しみと痛みを耐え忍びながら、苦境の下でも努力をつくして最善を求める。」を学び、そして冷静に過去を振り返る事が出来た気がする。まさに読書の、それも良書である、この本のおかげである。
改めてこの本について述べると、これは中野孝次氏が幸田露伴の「努力論」を自分なりに噛み砕いて解説している書である。「努力論」は中野孝次氏のような教養豊かな方をしても難しい内容のようで、一方で、会社倒産や高い失業率の蔓延する現在に於いて(2001年11月初版)、この「努力論」が前向きの思考を人々に与え、暗い世の中を元気づけることができるのではないか、との思いから、現代語に訳して更に解説を加えたものである。そう言われると、中野孝次氏ほど「努力論」を述べるのに適切な人はいないのではないか、と思った。
私が気に入ったのは、「気」についての幸田露伴の記述である。「気」という東洋独特の物のとらえ方を中心に、人間の為すこと、状態を説く、ということに中野孝次氏も最初は戸惑ったというが、中野氏がそれを理解して解説するに於いて、我々も「気」の重要さが次第に分かってくるのである。大切なのは。「張る気」だという。その「張る気」を維持するには、「信念のない人間は、状況が我に不利になるととたんに崩れたのである。どんな状況になろうとも挫けぬ強さを持つには、日頃からつねづね自分は何を善と思うか、何を正しく何を不正と思うかなど、真実とは何かについて思いをいたし、自分の信というものを作りあげておかなければならぬと知られるのだ。」からは人間の尊厳や気骨の大切さを改めて教えてもらった気がする。
述べられていることは言ってみれば真に常識的なことで、その通り、と思うことばかりであるが、時としてこういう物を読み、現在の自分に当てはめることがいかに大切であるかと言うことを改めて認識した、という思いである。読んでいる最中も読み終えてからも、元気が出てくるのだった。私に取っては、今の状態を助けてくれた、と感謝するような本であった。
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自分を活かす“気"の思想 ―幸田露伴『努力論』に学ぶ (集英社新書) 新書 – 2001/11/16
中野 孝次
(著)
大変革の21世紀を心豊かに生きぬくために、人生の達人・幸田露伴の『努力論』を手がかりに、自助努力の知恵を説く。一読、身体に力が満ち、困難に立ち向かう元気が出るという“逆境の時代"の新幸福論。
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2001/11/16
- ISBN-10408720118X
- ISBN-13978-4087201185
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2001/11/16)
- 発売日 : 2001/11/16
- 言語 : 日本語
- 新書 : 224ページ
- ISBN-10 : 408720118X
- ISBN-13 : 978-4087201185
- Amazon 売れ筋ランキング: - 237,459位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 322位日本の思想(一般)関連書籍
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2011年6月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2009年9月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は幸田露伴さんが書いた『努力論』の内容を、中野さんが紹介してくれている本です。僕は
『努力論』を読んでいません。だから、紹介内容がどこまで正確なのか。解釈にどれだけの偏りが
あるのか。判別できません。今回はどれだけ上手に紹介できているか?は問題にはしません。中野
さんの文章がどれだけ我々の自己研鑽に役立つか?という視点でレビューします。
本書ではまず、多くの自己啓発書が助言する「自助」の大切さを力説しています。努力している意識
が無い位が本物との事。幸福の来訪を待つのではない。自らを充実させて、自然と幸福が身について
くれるというニューアンスです。本田健さんをはじめとする発想、すなわち金を求めるより、金持ち
として生きていける新しい自分になるという発想に似ていますね。原書の執筆当時の時代背景は明治末
の混沌期でした。明日が見えにくい不安な時代。そんな時代だからこそ、自分の眠れる力を努力に
よって掘り起こせ!自分の腕で今日と明日の幸せを切り開け。そういうメッセージが込められて
います。現在を生きる我々に対して。
上記の基本方針を骨子として、様々な角度から自己の磨き方を教えてくれています。たとえば…
自己啓発の戦術としては、無心に優れた存在に学ぶ事を推奨しています。優れた師、良書などが該当
します。また、幸運を浪費しない謙虚さ。愛他精神の発揮の尊さも助言しています。努力は辛い面も
あるけれど、好きな事や物を得るための行動でもあるそうです。現在をよしとせず、良くして行こう
という改善の行動です… という具合です。
最後は東洋的思想の極み。大自然と大宇宙というスケールで僕には理解できませんでした。ですが、
自己啓発書としては十分読み応えのある本だったと感じました。
『努力論』を読んでいません。だから、紹介内容がどこまで正確なのか。解釈にどれだけの偏りが
あるのか。判別できません。今回はどれだけ上手に紹介できているか?は問題にはしません。中野
さんの文章がどれだけ我々の自己研鑽に役立つか?という視点でレビューします。
本書ではまず、多くの自己啓発書が助言する「自助」の大切さを力説しています。努力している意識
が無い位が本物との事。幸福の来訪を待つのではない。自らを充実させて、自然と幸福が身について
くれるというニューアンスです。本田健さんをはじめとする発想、すなわち金を求めるより、金持ち
として生きていける新しい自分になるという発想に似ていますね。原書の執筆当時の時代背景は明治末
の混沌期でした。明日が見えにくい不安な時代。そんな時代だからこそ、自分の眠れる力を努力に
よって掘り起こせ!自分の腕で今日と明日の幸せを切り開け。そういうメッセージが込められて
います。現在を生きる我々に対して。
上記の基本方針を骨子として、様々な角度から自己の磨き方を教えてくれています。たとえば…
自己啓発の戦術としては、無心に優れた存在に学ぶ事を推奨しています。優れた師、良書などが該当
します。また、幸運を浪費しない謙虚さ。愛他精神の発揮の尊さも助言しています。努力は辛い面も
あるけれど、好きな事や物を得るための行動でもあるそうです。現在をよしとせず、良くして行こう
という改善の行動です… という具合です。
最後は東洋的思想の極み。大自然と大宇宙というスケールで僕には理解できませんでした。ですが、
自己啓発書としては十分読み応えのある本だったと感じました。
2010年11月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『努力論』は幸福論である、いかにしたら人は幸福を招きよせられることができるかを説いたものであると著者はいいます。『努力論』には、幸福三説というものが取り上げられています。人が努力によって幸福を招きよせるのに成功したとすると、露伴はこれを福と呼び、惜福、分福、植福に分類しています。
惜福とは、福を得たからといって喜んですぐに使い果たすのは、器が小さく、気持ちに余裕がありません。器の大きい人なら、そのくらいの福を得たからといって別に気にとられない、ことを言います。分福とは得た福を独り占めしないで、他人にその福を分かち与え、ともに楽しもうとする心の原ら気を言います。この惜福の工夫と分福の工夫をかねて行動する人は実に夫人であるといいますが、世の中にはそのような人が多くないというのはもっともだと思いました。
また、それらに勝って卓越しているよいこととして、自分の得た福を他人に贈与することにより世の中の福を増加させることを植福といいます。普通に考えると惜福も分福も植福もできていないかというか大切にするべきだという風潮自体がないですよね。むしろその真逆が良しとされている傾向にあるでしょう。
人は幸福になるために努力をするが福を得たときにはその使い方を心得なければいけないという考えは、アメリカ流のプラグマティズムにはない東洋的な発想だと思いました。少子高齢化、人口減少で今までのような右肩上がりの経済を当てにできない今、得られた福を独り占めにせず有効に活かさなければ、持続的な幸福はありえないとわたしは読みました。
惜福とは、福を得たからといって喜んですぐに使い果たすのは、器が小さく、気持ちに余裕がありません。器の大きい人なら、そのくらいの福を得たからといって別に気にとられない、ことを言います。分福とは得た福を独り占めしないで、他人にその福を分かち与え、ともに楽しもうとする心の原ら気を言います。この惜福の工夫と分福の工夫をかねて行動する人は実に夫人であるといいますが、世の中にはそのような人が多くないというのはもっともだと思いました。
また、それらに勝って卓越しているよいこととして、自分の得た福を他人に贈与することにより世の中の福を増加させることを植福といいます。普通に考えると惜福も分福も植福もできていないかというか大切にするべきだという風潮自体がないですよね。むしろその真逆が良しとされている傾向にあるでしょう。
人は幸福になるために努力をするが福を得たときにはその使い方を心得なければいけないという考えは、アメリカ流のプラグマティズムにはない東洋的な発想だと思いました。少子高齢化、人口減少で今までのような右肩上がりの経済を当てにできない今、得られた福を独り占めにせず有効に活かさなければ、持続的な幸福はありえないとわたしは読みました。
2008年4月6日に日本でレビュー済み
幸田露伴の「努力論」を現代人が分かるように読み砕いた本です。
文学の見識がない自分にとって、
原作を読むのは非常にツライ行為ですが、
中野さんが紐といてくれた文章は、
非常に分かり易いものでした。
文中の中では、生きるとは?幸せとは?
といった、モチベーションを保ちつつ、
人生を豊かにする手法について、
解説がなされていました。
この本でも書かれていますが、
結果、自分の気の持ちようで、
努力することは、好きこそものの上手なれ。
といわれるように、好きだから努力できるわけで、
努力することに対して、誰かから評価を求めることは、
愚かなことであると書かれています。
これって当たり前のことで、
純粋に好きな人がいたとき、
好きな人に何かをしてもらいたいから努力するのではなく、
好きな人が好きだから、努力するんだと思います。
見返りを求めることは、幸せを呼び込まない。
とおっしゃっています。
さらに、分福の話もあり、呼び起こされた幸福は、
周りの人と分かち合うことで、結果、自身も幸福になる。
これは、環境保全にも繋がります。
と大きな規模感で語られていますが、
自分が幸せな時、環境に優しいことを行い、
それを周りに広めることができれば、
結果、自分の住む地球も美しくなり、
自分だけでなく、その子孫も幸福でありつつけることができる。
ということと同じだと思います。
単純ではありますが、昔の人の教養の広さを見習い、
より努力することを惜しまないように思わせてくれる本です。
文学の見識がない自分にとって、
原作を読むのは非常にツライ行為ですが、
中野さんが紐といてくれた文章は、
非常に分かり易いものでした。
文中の中では、生きるとは?幸せとは?
といった、モチベーションを保ちつつ、
人生を豊かにする手法について、
解説がなされていました。
この本でも書かれていますが、
結果、自分の気の持ちようで、
努力することは、好きこそものの上手なれ。
といわれるように、好きだから努力できるわけで、
努力することに対して、誰かから評価を求めることは、
愚かなことであると書かれています。
これって当たり前のことで、
純粋に好きな人がいたとき、
好きな人に何かをしてもらいたいから努力するのではなく、
好きな人が好きだから、努力するんだと思います。
見返りを求めることは、幸せを呼び込まない。
とおっしゃっています。
さらに、分福の話もあり、呼び起こされた幸福は、
周りの人と分かち合うことで、結果、自身も幸福になる。
これは、環境保全にも繋がります。
と大きな規模感で語られていますが、
自分が幸せな時、環境に優しいことを行い、
それを周りに広めることができれば、
結果、自分の住む地球も美しくなり、
自分だけでなく、その子孫も幸福でありつつけることができる。
ということと同じだと思います。
単純ではありますが、昔の人の教養の広さを見習い、
より努力することを惜しまないように思わせてくれる本です。
2002年2月2日に日本でレビュー済み
幸田露伴というと・・・実はよく知りません。ただ本書から察するに、ひとえに努力をもって気を高めるという意識の持ち主であることは非常によくわかりました。
努力といっても単純に何かに打ちこむのではなく、
・意思をもって楽観的にいきる
・無心にただ善事を為す
・あたりまえのことでも全集中力を注ぎ込む
・邪念を抱かない
という条件がつくようです。
それらの打ちこみ度合いによって「張る気」から「澄む気」へと進化して、究極を得ることができるのでしょう。
といいながら凡人の自分には、足元にも及ばない極地であるようにも思えますが。ただ凡人だからこそ、身の回りの出来ることから努力すべきである!とカツを入れられているように思えます。
自らを高めるべく、いかにして生き!!るか、そのとき自分の「気」の状態をどのように持っていくかを知りたい人、一読の価値ありです。
努力といっても単純に何かに打ちこむのではなく、
・意思をもって楽観的にいきる
・無心にただ善事を為す
・あたりまえのことでも全集中力を注ぎ込む
・邪念を抱かない
という条件がつくようです。
それらの打ちこみ度合いによって「張る気」から「澄む気」へと進化して、究極を得ることができるのでしょう。
といいながら凡人の自分には、足元にも及ばない極地であるようにも思えますが。ただ凡人だからこそ、身の回りの出来ることから努力すべきである!とカツを入れられているように思えます。
自らを高めるべく、いかにして生き!!るか、そのとき自分の「気」の状態をどのように持っていくかを知りたい人、一読の価値ありです。
2022年1月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
改めて人生とは、『苦労』の先にある。
では、苦労とはなんぞや?
無駄に努力しては、決してこの『領域』には入れない。
身のある『苦労』とは、当たり前のことが出来るか?これに尽きる。さもなくば、その人は只、苦痛から安楽を求めて『抜け道』を探し続けているのである。そうした人は、床に横たわったまま人生を無為にやり過ごしながら、只じっと涅槃を待つに等しいのだ。
それが良いとか悪いとか言うのではない。
貴方自身の潜在的能力や価値は、他人は決して計ることは出来ないのである。計り知れない貴方の人生をより高い領域に導きたいのであれば、『苦労』する他はないのである。
しかし、苦労とは、当たり前のことをやることなのである。そして、日々継続することである。出来れば徹底的にこれを為すのである。布団を上げる。家の四隅まで掃除する。等々。これがもし、貴方にできるならば『人生』は上昇し始めるだろう。
人生を良くしたいのならば、自分の体の奴隷になってはいけない。自分の体を使う使用人でなくてはならない。
出来る小さな小さなことから始めればよい。
やがては、人生という山をもいのままに動かせるようになるだろう。人生を変えるのに時間は要らない。何年も何年もかかるではない。
では、苦労とはなんぞや?
無駄に努力しては、決してこの『領域』には入れない。
身のある『苦労』とは、当たり前のことが出来るか?これに尽きる。さもなくば、その人は只、苦痛から安楽を求めて『抜け道』を探し続けているのである。そうした人は、床に横たわったまま人生を無為にやり過ごしながら、只じっと涅槃を待つに等しいのだ。
それが良いとか悪いとか言うのではない。
貴方自身の潜在的能力や価値は、他人は決して計ることは出来ないのである。計り知れない貴方の人生をより高い領域に導きたいのであれば、『苦労』する他はないのである。
しかし、苦労とは、当たり前のことをやることなのである。そして、日々継続することである。出来れば徹底的にこれを為すのである。布団を上げる。家の四隅まで掃除する。等々。これがもし、貴方にできるならば『人生』は上昇し始めるだろう。
人生を良くしたいのならば、自分の体の奴隷になってはいけない。自分の体を使う使用人でなくてはならない。
出来る小さな小さなことから始めればよい。
やがては、人生という山をもいのままに動かせるようになるだろう。人生を変えるのに時間は要らない。何年も何年もかかるではない。