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「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史 (新潮文庫) 文庫 – 2011/1/1

4.0 5つ星のうち4.0 21個の評価

開業から百四十年、鉄道はもはや、日本人と切っても切れない存在になった。その発達は都市の形成に影響を与え、文学の一ジャンルを生み、沿線に特有の思想を育てた。また天皇制支配を視覚的に浸透させる目的で活用されたお召列車での行幸啓など、国家や政治とも密接な関わりがあった──鉄道を媒介にして時代を俯瞰する、知的で刺激的な「鉄学」入門。『鉄道から見える日本』改題。
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登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 新潮社 (2011/1/1)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2011/1/1
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 255ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4101345805
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4101345802
  • カスタマーレビュー:
    4.0 5つ星のうち4.0 21個の評価

著者について

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原 武史
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上位レビュー、対象国: 日本

2024年3月18日に日本でレビュー済み
本書は異なる切り口から鉄道と日本の近現代の関わりを書いた全8章で構成されている。

 原さんは永井荷風や高見順などの作家の日記や随筆に書かれた鉄道の記述から思考を広げていく。

 しかし、特定の鉄道沿線に住むということは、その鉄道が築いてきた歴史や文化、沿線風景、あるいは鉄道が通じる地域の風土といったものに、じつは深く規定されることなのではないか、本人は意識しないままに、日常的に利用する鉄道からものを発想することがあるのではないか、と私は考えている。それを作家の日記や随筆から検証してみたいのである。
(原武史『「鉄学」入門』p53)

 人間の行動や思考が環境に左右されることは既に多くの人が指摘している。たとえば家庭環境、会社や学校などの所属している組織があげられる。人々は無意識に自分の置かれた環境に己を乗っ取られているのだ。

 原さんは大都市に生きる作家の思考には、ときに眺めときに利用した鉄道の沿線風景がにじんでいるのではと考えて彼らの文章を読み解いていく。

 僕は環境といえば「どこにいるか」という所属や所在地に目が向いていた。原さんは所在を起点に「何を見ているか」まで視点を広げている。そこで大きなヒントになるのが鉄道というわけだ。

 鉄道によって思考が規定されるのは作家だけではない。一般庶民も同じである。

 原さんは明治から昭和前半(敗戦まで)にかけて全国の鉄道に最もよく乗った人物に天皇をあげている。天皇や皇太子はお召列車に乗って全国各地を行幸啓(訪問すること)をしていた。この行為により日本の人々は自らを天皇を元首とする国の臣民だと自覚する仕掛けになっている。

 すなわち近代日本においては、支配の主体である天皇・皇太子が行幸啓を全国レベルで繰り返し、彼らの姿を視覚的に意識させることを通して、人々に自らが「臣民」であることを実感させる、という戦略が一貫してとられていたのである。イデオロギーのように観念的・抽象的なものではなく、具体的な身体を媒介とする支配という意味で、私はこれを「視覚的支配」と呼んでいる。
(原武史『「鉄学」入門』p87)

 対して、ある交通機関の広がりによって天皇や皇室の存在を意識しずらくなった例もある。それが地下鉄だ。

 東京都は元々都心を路面電車が走っていた。都電である。ところが次第に都電は地下鉄へと取って代わられる。都民の足が地上から地下へと移ったのだ。

 桜田門と半蔵門。これらはかつての都電でも現在の地下鉄でも停留所・駅名になっている。しかし今の人々が桜田門駅や半蔵門駅から実際の桜田門や半蔵門を想起することができるだろうか。

 都電時代は各停留所に止まった際にそれぞれの門を眺め、その奥にある皇居をイメージできた。今、駅名としての桜田門と半蔵門は門そのものやその向こうの皇居をイメージさせるものではなく記号になっている。これも鉄道によって人々の思考が規定される一例である。

 鉄道に限らず自分の思考や言葉が何に影響をうけているのか。それを確かめる、観察する楽しさをこの本は教えてくれる。
2012年12月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「鉄学概論」というタイトルから受ける印象として、鉄道マニアを
乗り鉄、撮り鉄という属性ごとに分類して・・・といった内容かと
思いましたが、鉄道の歴史を政治や皇室と関連付けて解説するという
新しい切り口の作品でした。
 
普段、通勤や出張、旅行で鉄道に乗っている時に、鉄道の歴史を
深く考えることはありませんが、本作では鉄道と政治思想、天皇、
住宅問題等と関連付けることにより、「鉄道が果たしてきた役割」
を気軽に学ばせてくれる内容になっています。
 
「車や飛行機では眠れないが、電車に乗っているとすぐに寝てしまう」
という人は意外に多いのでは? この本を読み、「日本人には、鉄道が
心地良いというDNAが組み込まれているのかな〜」と思いました。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2014年2月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は鉄道好きです。しかし、鉄道をあまり知らない方でも興味を持てる作品となっています。
2011年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
原 武史氏の著書はかなり読んでいるので
重複部分が多く正直ガッカリした
8人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2011年8月29日に日本でレビュー済み
 2009年にNHKで放送された「NHK知る楽」の内容をまとめたもの。同年6月に放送のテキストとして出た『鉄道から見える日本』の改題・文庫化である。
 内田百'閨E阿川弘之・宮脇俊三という鉄道紀行の巨人たちについて、天皇の鉄道利用と近代日本、沿線開発、西の阪急と東の東急の対比、鉄道騒擾の分析など、鉄道にまつわる8つのテーマから近代日本が切り取られている。
 これまでの著作/研究の内容を分かりやすく簡潔にまとめなおし、新資料を加えたといった内容だ。
 近代日本の歴史が、鉄道という素材からくっきりと浮かび上がっており、非常におもしろかった。ただ、いささか図式化しすぎているようなきらいもある。
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2011年1月20日に日本でレビュー済み
近頃鉄道ファンがやたらと増えているようです。
ちょっと前まで変わり者扱いだったのが嘘のようです。
おまけに女性ファンまでいるなんて隔絶の感があります。
私は「乗り鉄」でも「撮り鉄」でもない少数派の「時刻表」ファンです。
鉄道列車に乗るより時刻表、本を読んでいる方が好きという「邪道な鉄ちゃん」です。
著者は「はじめに」でも書いている通り、マニアックな「鉄ちゃん」ではありません。
天皇制などを中心として政治思想の専門家です。
それだけに巨視的な眼で明治以降の近代と鉄道をとらえています。
第三章「鉄道に乗る天皇」では天皇制の可視化が鉄道によってもたらされたという、
専門分野の卓見を述べられています。
個人的には第七章「新宿一九六八、一九七四」と第八章の「乗客たちの叛乱」が面白かったです。
今では誰も忘れているか知らないでしょうけれど、新宿西口広場は「通路」である、
と決められているので、今でも立ち止まってはいけないんですよ。(笑)
ましてギターを持って歌うなどいけないのです。
国労、動労の起こした「順法闘争」は本当に迷惑させられました。
まだ子供でしたが、労働組合というモノはこんな迷惑なことをするものか、と思ったものです。
首都圏で「暴動」が起きたことなど、もう忘れられているでしょう。
しかし、あの行為が後に「国鉄民営化」を国民の大多数が支持した理由になったはずです。
その詳細を説明してくれているこの本は、昭和史の重大な部分を解いてくれるものです。
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2011年5月23日に日本でレビュー済み
よくある鉄道関連文庫のような、紀行文的な要素は基本的になく、
文字どおり「車窓から」日本近現代史を考察したような内容です。

一番おもしろかったのは「西の阪急、東の東急」。
東西の名門の成り立ちから、東西のターミナル、沿線の造りの違いを解き明かしていているのですが、すごく合点がいきました。
つまり、渋谷など、首都圏のターミナルでは、JR駅を中心に、乗換に便利な位置に私鉄駅が設置されるのに対し、関西圏では大抵連携が悪い。
(大体、東京人である私にとって、大阪駅と梅田駅の関係なんてほとんど理解不能だ。)相互直通運転も首都圏のほうがはるかに多い。
更に、車内放送では、関西の私鉄ではJR線の乗換案内は行っていないそうで。
それもこれも「官」への距離感・対抗意識の違いによるものだ―というような内容です。

どの章も「鉄学」に興味ある方なら面白く読めるはずです。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2011年3月9日に日本でレビュー済み
 歴史学者・原武史の「鉄学」概論である。タイトルにひかれて手にとった読者も、すでに原武史の著作を何冊か読んできた者にとっても、十二分に楽しめる内容の読み物になっているといえよう。また本書から逆に個々の作品に読書の幅を拡げていくのもいいかもしれない。原武史のエッセンスが本書に凝縮されているからだ。一言でいえば、「鉄道×日本近現代史」である。

 この本に取り上げられたテーマを列挙するなら、鉄道紀行文学、鉄道沿線と作家、近代天皇制、東西日本の私鉄沿線宅地開発、住都公団による鉄道沿線の団地開発、路面電車の廃止による首都東京の記号化、といったことになるだろうか。
 本書を読んでいて強く印象を受けたのは、鉄道を軸にして考えると、第二次大戦を境にした戦前と戦後の断絶よりも、1960年代を前後にした断絶のほうがはるかに大きいということだ。
 1960年代とはいうまでもなく「高度成長期」、この時代にはモータリゼーションの急激な進展にともなって渋滞緩和のために高速道路が建設され、路面電車である都電は廃止され地下鉄によって代替され、住宅供給の目的で私鉄沿線には多数の団地が建設された。
 東京への一極集中がさらに進んだなかで、1970年代前半には新宿駅を舞台にした暴動や、都内各地や高崎線上尾駅での通勤者による暴動も発生したのであった。2010年代のいまからはまったく想像もできないような状況が、民営化前の国鉄(当時)には存在したのである。著者と同じく1962年生まれの私には、肌感覚をもって理解できることも多い。

 鉄道を軸にして日本近現代史を考える、あるいは日本近現代史を鉄道をつうじて見る。そのどちらでもいいのだが、とくに「高度成長期」とは何だったのかを考えることのできる内容になっている。文庫本なので、ぜひ車中で読みたい本である。
5人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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