この本は「科学技術は人間をどう変えるか」という
よりも「人間は生活の場でどう科学技術を構築してきたか」
という方が相応しい感じがする。
単純な技術史として捉えると主に２０世紀以降の近代科学
技術史を扱っているとも取れるがそんなに単純ではない。
著者は科学技術の発展は泥臭い人間生活や文化から
生じており、技術の発展は時には科学の偏見によって
さえぎられてきたと記しており、面白いのはプログレッシブ
なメンタリティとトラディショナルなカルチャーが混然一体
となって科学技術の発展を促し、人間の常識を打ち破って
それを新たなる常識にしてしまうと述べている。
同時に技術によって更新される生活空間・手段
（例えば通信、医学：ここでは分子遺伝学）に対して
新たなモラルの提唱もしており、その意味で科学技術は
宗教の領域に踏み込む可能性を示唆している。
その多面的な分析と種々の科学技術分野の統合的な見解
は見事である。言葉も平易で分かり易い。
この本が執筆されたのは１９８０年代でやや古めかしさ
はあるが本質は決して古くない。
私流に言うと「分析科学技術史工学」といった感じで
ある。（具体的なモノ作りまでは踏み込んでいないが）
その主張は科学技術に対する認識が洗われるもので
ある。
技術系研究開発者必読の書であると信じる。
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