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審判は見た! (新潮新書 28) 新書 – 2003/8/1
威厳と珍事の舞台裏、これぞプロ野球裏面史。
緊迫のクロスプレーで宙を舞ったカツラ、トイレ行きたさに「ゲームセット」、激怒する観客の包囲網からの脱出劇、果ては監督・オーナーとの駆け引きまで──。近年頻発する誤審騒動の度ごとにクローズアップされるプロ野球審判の存在。ジャッジは正しくて当たり前、ひとたび間違えれば、選手からはどつかれ、熱狂的ファンには命さえ脅かされる因果な商売。威厳と珍事の狭間で、審判が垣間見たプロ野球裏面史とは!?
- 本の長さ207ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2003/8/1
- ISBN-104106100282
- ISBN-13978-4106100284
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商品の説明
抜粋
「俺がルールブックだ!」の名セリフを吐いたとされるパ・リーグ元審判部長の二出川延明。ある試合で塁審を務めた彼は、誰にも気づかれることなく、白熱したプレー中のフィールドで小便を済ませたという話がある。
事実とすれば、なぜ、そんな芸当ができたのか。
現在使用されている審判服のズボンの色はグレーだが、当時は紺色だった。紺色は濡れても変色しにくい。一方、変色しやすいといえば、土は濡れると色が変わる。が、芝は濡れても、変色することはない。
これらの条件が、二出川の試合中の小便を可能にした。すなわち、さりげなく芝の上に移動すると、そのまま垂れ流しを敢行してしまったのである。
「その話は僕も聞いたことがあるが」と、元セ・リーグ審判員の岡田功は言う。
「しかし、昔の試合は進行が早く、一時間半から二時間で終了していた。いまよりずっと短いんです。本当だとしたら、審判にあるまじき不摂生ですよ。小便はね、ある程度計算できるんです。寒い日には冷えないように股引を穿くとか、試合前に余分な水分をとらないとか、対策はいろいろある。僕は試合開始直前には必ず、小便を搾り出していたからね。ただ、困るのは大のほう。突然襲ってくるから、計算ができないんだ。これには、僕も何度か、脂汗をかいた」
前述したように、審判には神経性胃腸炎の持ち主が多い。いかに彼らがストレス漬けであるかを物語っているが、その副産物として、ある症状がつねに付いて回る。
下痢である。
第一次長嶋巨人時代の後楽園球場で行なわれた巨人―広島戦。レフト線審を務めていた岡田は、突如襲った下痢に煩悶していた。
「……ああ、たまらんな……」
その切ない様子に、レフト側ブルペンにいた広島のブルペン捕手が気づいた。
「どうしたんですか?」
「……クソしたいんだよなあ」
「そこ、トイレですよ」
ブルペン捕手がブルペンの隅のドアを指さした。その一言で岡田の気が緩んだ。腹までがさらに緩み、いっそう煩悶の嵐に襲われた。
打席には巨人の王が入っていた。打球が外野に飛ぶ確率が高いだけに、線審は特に“職場”を離れるわけにはいかないが、切なさはピークに達し、岡田は職場放棄やむなしの状況に追い込まれた。そのとき、王のハーフスイングをめぐって、抗議のため広島ベンチから古葉竹識監督が出てきた。
「ここだ!」
岡田は決断した。すかさずブルペンに駆け込むと、トイレに飛び込んだ。目も眩むような早業だった。岡田が現場に戻ってくるまでの所要時間は、わずか一、二分。打席を見ると、王はいなく、五番の柳田真宏が立っていた。
その柳田は凡打に終わり、六番のデーブ・ジョンソンが打席に入った。岡田はここで肝を冷やす。快音を残して舞い上がったジョンソンの打球は、岡田の頭上。レフトスタンドに飛び込む本塁打だった。
著者について
1957(昭和32)年北海道生まれ。本格派スポーツライターとして活躍中。最近はノンフィクション作品以外に、小説の執筆も手掛けている。著書に『巨人軍に葬られた男たち』(新潮文庫)、『捕手論』『コーチ論』(光文社新書)、『ジャッジメント』(中央公論新社)など。
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2003/8/1)
- 発売日 : 2003/8/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 207ページ
- ISBN-10 : 4106100282
- ISBN-13 : 978-4106100284
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,032,998位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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ある時は、審判の眼で。
ある時は、選手の眼で。
またある時は、監督の眼で。
そして、観客の眼で。
巡り巡ってさらに再び審判の視座に還っていく。
取材に基づいた膨大な事例や逸話を通じたこの「循環」にこそ、この本の考察の「厚み」の秘密を読み取ることができます。
P172にこんな文章があります。
“選手や監督が審判を育てる。その審判もまた、選手や監督を育てる。その連綿とした歴史こそが両者の信頼感と共栄意識を喚起させ、プロ球界隆盛のための要因の一つとなるのかもしれない。”
この言葉にたどり着いた頃には、この言葉が説得力をもって読み手に響いてくる「構え」ができていることでしょう。
本書は、野球の審判の実態に踏み込んだもの。二出川延行氏をはじめとした往年の「名審判」たちにインタビューを繰り返し、審判の苦労が描き出されている。野球ルールの複雑さ、審判になるのがいかに狭き門なのか、ミスジャッジの例、選手や監督の手関係など。どれも興味深い話ばかりで、審判というのが実に大変な仕事であることが伝わってくる。
ただ、氏のどの本もそうなのだが、なんだかバランスが悪い。思い込みで取材をして、一面的に書いているというか、大きく欠けているものがあるというか。うまく言えないが、読んでいて、審判というのは、それだけじゃないだろうという気がした。
けっこう昔の話から平成10年前後のエピソードまで揃えられており、幅広い年代の人に楽しめる本だと思う。
おそらく30代以上の野球好きなら知っている、元セリーグの審判員柏木氏・岡田氏などが語るその内幕やその当事者としての心境は非常に興味深く読むことができる。
日米の審判の比較もなされているが、著者は両者の大きな違いは『権威』だとしている。その考えは特段新しいものではないが、本書では日米の審判の置かれている立場の違いで説明するとともに、その『権威』を示すその具体的な事例として、審判の権威を傷つけたとして、レンジャーズ監督時代のバレンタインとヤンキース時代の伊良部が受けた審判からの“報復”を受けた事例を紹介している。
現在、メジャーリーグの試合は毎日のようにテレビで観ることが可能である。私もよく録画して観ているのだが、アメリカより日本の審判員の技術が高いように思えてならない。特にストライク、ボールの判定はそのように感じる。アメリカの審判のストライクゾーンはかなりアバウトであり、同じコースのボールがストライクになったりボールになったりして一貫しないことが日本より多い。アウト・セーフの間違いも多い。日本よりも監督・選手からの抗議も多い。
しかし、『権威』に守られているアメリカの審判は徹底して強気である。審判への暴力行為など考えられない。彼らより技術の高いはずの日本の審判たちが、毅然とした態度をとることの出来ない日本のプロ野球の仕組みは、やはり間違っているのではないか。
本書は審判の興味深い裏話を知ることが出来るだけではなく、そんなことも考えることの出来るなかなか優れた作品である。
特に現役・OB審判員諸氏のストライクゾーンの捉え方を、OB選手達が述べておりますが、皆、千差万別の捉え方で、アマチュア野球審判員諸氏の目から見ても、多少今後の審判活動の参考になるのではと感じております。
ボールが当たったり、選手と交錯したりといった意味だけではありません。
一つの判定が勝敗を分けてしまったときの試合後のファンの憤りです。
これが、審判に向けられたらたまりませんね。
遥かムカシ、広島東洋カープが今以上に弱かったときのエピソードは非常に胸に迫ります。
WBCでもどこかの審判が判定を難しくしていましたが、やはり、人間がやることなので、そこにはドラマがついて回ります。
大変面白く拝読いたしました。
また、日米の審判の比較も書かれている。私自身は日本型のやり方がやはりいいのではないかと思ったが、好き嫌いはおいても、この本で違いを認識できる。
選手の無知や審判の権利の低さ、審判自身の問題点から、様々な珍プレーまで多岐にわたって書かれており、審判というひとつの媒体を通しながら、様々な視点で野球を見ることができる。